泌尿器科への受診動機として、非常に多い症状です。ここでは、 女性の患者さんで目に見える赤い尿がでた場合(肉眼的血尿)を説明します。 腰痛や排尿時痛などの症状がある場合は、むしろ良性疾患の可能性が高く、 症状のない血尿の方が、膀胱がんなどの悪性疾患の可能性が高いです。
女性の肉眼的血尿の原因として考えられる疾患を頻度の多い順に列挙します。
女性の血尿では一番多い原因です。頻尿や排尿時の痛みを伴うことがほとんどです。 膀胱炎に対して最近多くの市販薬が出ていますが、市販薬の成分は漢方成分が多く、 抗生物質は入っておりません。市販薬のみで様子をみると膀胱炎が増悪し腎盂腎炎になり入院が必要になったり、 いったん症状が治まってもすぐ再発したりしますので、 必ず泌尿器科を受診し抗生物質による治療を受けましょう。 膀胱炎の治療は専門である泌尿器科で受けましょう
尿の回数が急に多くなった
排尿後に下腹部が痛む
血尿がでる
これらが膀胱炎の典型的な症状です。
尿路感染症のページでも説明しましたが、尿道が短く、 細菌が容易に膀胱までたどり着きやすい女性におこる疾患です。 通常、男性には起こりません。
これは、神話のように語り継がれている言葉ですね。答えは「NO」です。 おしっこを我慢しただけでは膀胱炎にはなりません。 尿は無菌状態ですので、膀胱炎になるためには、まずは細菌が尿道から侵入しなければなりません。 細菌が侵入していないのに、おしっこを我慢しても膀胱炎になるはずがありません。 ただ、細菌が侵入した状態ではおしっこを我慢すると尿の中で細菌が繁殖しますので、 膀胱炎になればおしっこを我慢してはいけません。 膀胱炎になれば、水をたくさん飲んで、尿をたくさん出して細菌を外に出してやる必要があります。
膀胱炎になるためには、尿道から細菌が侵入する必要があります。 そしてその細菌の大半は大腸菌です。大腸菌とは便の中に生育している菌です。 つまり肛門に存在する大腸菌が尿道に侵入してくるわけです。 女性の場合、肛門、膣、尿道が解剖学的にかなり近い位置に存在します。 肛門から直接尿道に侵入するケースもありますが、普通はいったん膣を経由します。 膣内で繁殖した大腸菌が尿道へ侵入していくわけです。 つまり、肛門からまず膣に大腸菌が侵入し、 膣内で繁殖し尿道に侵入するといった経路で膀胱炎は発症します。
では、肛門から膣に大腸菌が侵入する原因は何かといいますと、一番は性交渉です。 どうしても女性は肛門と膣が近いため、通常の性交渉をするだけで膣内へ大腸菌が侵入する原因になります。 膣内の環境がよければ、膣内の善玉菌が大腸菌の膣内での発育を阻止し、膀胱炎になることはありません。 しかし、ストレスや疲労などで女性の膣内の善玉菌が少なくなった悪い環境下では 大腸菌は膣内で繁殖し尿道へ侵入し膀胱炎になる原因となります。 ですから、疲労やストレスなどで膣内の環境が悪い状況での性交渉を行ったあとは注意が必要で、 その場合は細菌が尿道へ侵入するリスクが高いため、尿を我慢せずに出してあげることが重要です。 特に性交渉後就寝前には排尿を済ませて膀胱を空っぽにしておき、 たとえ大腸菌が侵入しても膀胱内で繁殖できないようにして就寝することをお勧めします。
膀胱炎を繰り返すことはあります。特に閉経直前や閉経後の女性の場合、 膣内の環境が悪くなりやすく、膣内で大腸菌が成長しやすい環境におかれることが多いため、 膀胱炎を繰り返すことがあります。 この場合は性行為と関係なく繰り返してしまいます。 この場合はまず膣内の環境をよくすることが必要であり、 婦人科受診や日常生活の改善で膣内環境の改善に努めることが重要です。
また、閉経後の女性で膀胱炎を繰り返す原因の一つとしてウォシュレットのビデ機能の汎用があります。 膣内の環境が悪い状態でビデ機能を使用すると細菌をまき散らしているのと同じです。 ですから、ウォシュレット®のビデ機能に関しては特に高齢女性の方は使用を避けていただいた方が望ましいです。
一方、若い女性で膀胱炎を短期間で繰り返すことはほとんどありません。 もし若い女性の方で膀胱炎に繰り返しなる場合は、 膀胱炎に対しての適切な治療がなされなかったことにより完全に治癒しきらず再発してしまうことが多いです。 泌尿器科では、下記の治療の項に示すように膀胱炎の治療において尿培養検査を必ず行い、 完全治癒を目指した適切な抗生物質による治療を行います。 また、再発を繰り返す場合は膀胱機能の異常など何か疾患がある可能性もありますので、 必ず泌尿器科で精査を受けましょう。
膀胱炎の治療は抗生剤の内服です。 しかし、最近は、抗生剤の効きにくい細菌(薬剤耐性菌)が急速に増加しており、膀胱炎の治療も複雑化してきています しかし、最近は、抗生剤の効きにくい細菌(薬剤耐性菌)が急速に増加しており、膀胱炎の治療も複雑化してきています。薬剤耐性菌の詳細は尿路感染症のページをご参照ください。
膀胱炎の治療に最もよく使用される薬剤がニューキノロン系薬剤で、 代表的なものにレボフロキサシンという抗生剤があります。この抗生剤は抗菌力が非常に強く、 1日1回の3日間処方で膀胱炎が改善しますので便利な薬剤です。 しかし、以前からこの抗生剤が汎用されてしまったため、 膀胱炎の原因となる主たる菌である大腸菌のレボフロキサシンへの耐性化(効かなくなる)が進んできてしまいました。 若い女性で今まで抗生剤をあまり服用されていない方には第一選択として投与しますが、 それ以外の方に関しては投与しにくい状況になってきています。 現在はセフェム系という薬剤を1日3回1週間処方が一般的となっています。 いずれにしろ、薬剤耐性菌が増加している現在、 膀胱炎の治療は尿の培養検査でどのような細菌が原因となっていたかを調べることと、 ちゃんと治癒したかの確認を行うことが必要です。 症状が改善してもしっかり治癒していないければすぐに再発する原因となりますので、 治癒確認のために後日(1週間後)、受診していただくことをお勧めします。
兵庫県神戸市中央区北長狭通4丁目8-3元町結縁ビル1F みうら泌尿器科クリニック院長 三浦徹也(日本泌尿器科学会専門医)