肝臓

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肝臓の機能概要

lever 肝臓には下表のように、いくつかの重要な働きがある。

合成能 血清たんぱくの主成分であるアルブミン、血液を固める働きのある凝固因子などを合成する。
分泌能 脂質、たんぱく質の消化・吸収にかかわる胆汁を胆管内に分泌する。
代謝・分解能 いくつかのホルモンや薬剤、アンモニアなどを代謝・分解して別の形にしたり、人体にとって無害にしたりする。
肝臓は、体の中で最も大きな臓器で、大人では重さ1,000gほど(一般的に、体重×20g)になる。 右の上腹部に位置し、肋骨(ろっこつ)に守られていて、上は横隔膜、下は胃や十二指腸に接している。 解剖学的には、肝鎌状(かまじょう)間膜を境に左右に分けられていて、 手術など実際の治療にあたっては、カントリー線(中央線)と呼ばれる、 下大静脈と胆のうを結ぶラインで分け、左を左葉(さよう)、右を右葉(うよう)としている。 肝臓はまた、「血の固まりでできている」といわれるほど、血液が大変豊富な臓器だ。 肝臓の血管としては、消化管から送られてきた血液を集めた「門脈」、 肝臓に栄養や酸素を送る「肝動脈」、肝臓から流出する血液を心臓に送る「肝静脈」 という太い血管が3本あり、それらの血管から枝分かれした毛細血管が無数に張り巡らされている。 この血管の多さが、肝臓がんの手術を難しくする。 このように肝臓に多くの血管が存在するのは、代謝や解毒などにかかわる多くの役目を担っているからだ。 その役割は500以上にも上るといわれており、肝臓は「化学工場」に例えられる。
もう一つ、ほかの臓器にはない肝臓の大きな特徴は、一部を切り取っても再び成長する、 つまり再生が可能な臓器であるということだ。 肝機能のよい人なら、肝臓全体の3分の2を切除してももとの大きさの90%ほどまでは再生する。 この驚異的な再生能力があるからこそ、肝臓ではドナーから肝臓を移植する、生体肝移植という治療法ができる。 ただし、肝炎などで肝機能が低下するほど、再生能力が落ち、肝硬変になると、再生はほとんど不可能だ。

肝臓がんの概要

肝がん又は肝臓がんは 悪性の腫瘍で、他の臓器から転移してできる「転移性肝がん」と、 肝臓から発生する「原発性肝がん」がある。多いのは転移性で、原発性の4~10倍ともいわれる。 原発性肝がんのうち9割を占めるのは、肝細胞ががん化してできる肝細胞がんだ。 残りは肝臓内を走る胆管にできる「胆管細胞がん(肝内胆管がん)」だ。 一般的に肝臓がんとは、肝細胞がんのことを指す。B型およびC型肝炎ウイルス感染が主な原因だが、 最近では非ウイルス性の脂肪性肝疾患の患者が、肝臓がんを発症するケースも増えている。 肝臓がんは男性に多い傾向があり、男性の部位別がん死亡数の第3位に入る。 病気にかかる割合(罹患率)を年齢別に見ると、男性は45歳、女性は55歳から増加する。
肝細胞がんは肝臓を構成するメインの細胞である肝細胞から発生し、発生した肝細胞がんは 多くの場合、球状の塊として、周りの肝組織を圧排(押し広げる)しながら少しずつ 大きくなっていきます。その過程で「被膜」と呼ばれる繊維性のカプセルで おおわれていきます。2㎝以下であれば、そのカプセルから外に出ることは 少ないのですが、3㎝を越えてくると、被膜の一部を越えて肝内の血管に入り込み、 血液の流れに乗って肝内外に転移する可能性があります。
リンパ管にがん細胞が侵入し、リンパの流れに沿ってリンパ節に転移をしていくが、 肝細胞がんのリンパ節は比較的まれで、ある程度離れたリンパ節は次の 「遠隔転移」と同じ扱いとなる。
遠隔転移(離れた臓器への転移)は、 リンパ液の流れに乗ってがんの周辺から遠くのリンパ節へと広がっていくものと、 血液に乗って他の臓器に転移するものがある。肝細胞がんの場合、骨や肺への転移が主だが、 その他の臓器へも転移することがある。
肝臓がんの多くは肝炎から発生する。肝炎の定期的な検査を受けていれば、 早期に発見することができるがんであり、それが一つの特徴だ。 肝臓がんは、再発する可能性が高い。 できたがんを治療しても、別のところからまた、がんが出てくることがある。 手術(肝切除)をした患者さんが1年以内に再発する率は25~30%。5年以内なら70~80%となり、 ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法などの局所療法ではその割合がさらに高くなる。 このため、肝臓がんの治療は「モグラたたき」にたとえられ、出たらたたく、 をくり返す。何度も治療をしなければならないのは、 患者さんにとってつらいことだが、 再発してもさまざまな治療手段がある。 ここが肝臓がんとほかのがんとが大きく異なるところで、 患者さんはあきらめずに根気よく治療を続けることが大切だ。
肝臓がんは、肝臓内での転移が多いのが特徴で、肝臓からほかの臓器へがんが 転移する遠隔転移や、リンパ節転移は多くない。 がんが進行すると門脈腫瘍(もんみゃくしゅよう)栓がおこり、治療も難しくなる。 がん細胞が、肝臓に血液を送る血管である門脈に広がって血管を詰まらせ、これが門脈腫瘍栓と呼ばれる。 通常、肝臓がんは厚い被膜(ひまく)に覆われていて、がんの成長に応じて被膜も広がっていく。 ところが、なかにはこの被膜を破って血管内に入り込み、がんが血液に乗って散らばり、 その血管の血流の下流で再発が起こる。 門脈腫瘍栓があると、手術はできない場合が多く、治療の選択肢が限られる。

肝臓がんの原因

B型やC型肝炎ウイルスの感染による慢性肝疾患が、原因の約80%を占める。 肝炎ウイルスにはA、B、C、D、Eなどさまざまな種類が存在しているが、 肝がんと関係があるのは主にB、Cの2種類だ。 近年は抗ウイルス療法によって、肝炎ウイルスを体内から排出できるよう になり、ウイルス性肝炎が原因の肝臓がんは減りつつある。 次に肝臓がんのリスクとして注目されるのが、アルコールの過剰摂取や喫煙、 非アルコール性脂肪性肝疾患だ。「非アルコール性脂肪性肝疾患」は肥満や 糖尿病等に起因し、その中の、「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」は、肝硬変、 肝臓がんへと進展するケースが増えてきている。 カビ毒のアフラトキシンが原因の場合もある。 いずれの場合も、 慢性の炎症によって肝細胞の破壊と再生が繰り返され、 そのうちに遺伝子の突然変異が蓄積して、がんを発症する。


肝臓がんの症状

肝臓は自己修復・自己再生機能が備わっており、炎症やがんが生じても ある程度進行するまでは患者が気づく症状はほとんどない。肝機能の低下が 進んではじめて、食欲が湧かない、全身がだるい、疲れやすい、 腹部の膨満感など、肝炎の症状が見られるようになることが多い。 更に進行して肝硬変から肝臓がんへと進展すると、黄疸、腹水、全身のかゆみ、 むくみ、便秘や下痢といったさまざまな症状が現れたり、肝臓の左側にがんが できてそれが大きくなると、みぞおち周辺の固いしこりや、おなかの圧迫感や 突然の強い痛み、貧血などが現れたりすることもある。また、肝性脳症も末期の 肝臓がんに見られる症状の一つで、異常行動や意識障害、昏睡状態を招くことがある。 また、肝臓に血液を運ぶ門脈の流れが悪くなり、そのかわりに食道や胃などの静脈が 腫れてこぶのようになる(食道・胃静脈瘤)こともある。これらのこぶが破裂して(静脈瘤破裂) 大量の吐血や下血が起こることもある。静脈瘤破裂は時に致命的となるので、 定期的な内視鏡検査を受けることも大切です。


肝臓がんの検査・診断

まずは医師による問診と診察を実施し、肝臓がんを疑う場合は、腹部超音波、CT、MRIなどの 画像診断を中心に、血液検査を補助的に実施する。腹部超音波検査では、がんの大きさや数、 血管との位置関係、拡がり具合、肝臓の形や状態、腹水の有無を確認する。CT、MRIは、がんのタイプ、 転移や浸潤の状況などを調べ、より明確に臓器の状態や病変を捉えるために造影剤を用いることもある。 血液検査ではALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPなどの値を確認することで肝臓の機能を調べる。 腫瘍マーカーはその値によって、がんの進行度を測る。

肝臓がんの治療

切除可能ながんは、基本的に手術によって取り除くことが推奨される。 手術の場合は、がんとその周囲を切り取る肝切除手術、肝機能が悪く切除 が難しい場合に肝臓をすべて摘出してドナーから肝臓を移植する肝移植手術がある。 ただし、肝機能がどれだけ維持できているか、手術に耐えられる全身状態か、 などを考慮して判断される。腫瘍の大きさや個数によっては、 体外から差し込んだ電極から電流を流すラジオ波焼灼療法(RFA)や、 エタノールを注入する経皮的エタノール注入療法(PEIT)など、 腫瘍を壊死させる局所穿刺療法が有効なケースもある。そのほか、 肝細胞がんは主に肝臓の動脈から酸素・栄養をもらっていることから、 肝臓の動脈に抗がん剤を注入する肝動注化学療法、抗がん剤と塞栓物質を 注入してがんに送られる酸素・栄養を遮断する肝動脈化学塞栓療法(TACE)、 最近では内服の化学療法など、多彩な選択肢から最も適した治療法を検討する。 なお、強力な放射線をターゲットにピンポイントに当てられる陽子線治療 が検討されることもある。


穿刺〔せんし〕局所療法

体の外から針を刺し、がんに対して局所的に治療を行う療法をひとまとめ にして経皮的局所療法と呼ぶ。穿刺療法ともいわれ、手術に比べて体 への負担の少ないことが特徴だ。この治療は一般に、がんの大きさが3cmより小さく、 3個以下が対象だ。がんの一部が残ってしまう危険もあるが、 比較的手軽に行うことができ、副作用が少なく、短期間で社会復帰できる という長所がある。
経皮的エタノール注入療法(PEIT)は、無水エタノール(純アルコール)を 肝がんの部分に注射して、アルコールの化学作用によってがんを死滅させる 治療法です。術後に発熱、腹痛、肝機能障害などの合併症が起こること もある。
経皮的マイクロ波凝固(ぎょうこ)は、療法(PMCT)体の外から特殊な針を がんに直接刺し、マイクロ派という高周波の電磁波をあてることで、 がんを熱で凝固させる治療法だ。
ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)は、体の外から特殊な針をがんに 直接刺し、通電してその針の先端部分に高熱を発生させることで、 局所のがんを焼いて死滅させる治療法だ。発熱、腹痛、出血、腸管損傷、 肝機能障害などの合併症が起こることもある。

肝動脈塞栓(そくせん)療法、肝動注化学療法

肝動脈塞栓療法(TAE)は、がんに栄養を運んでいる血管を人工的にふさいで、 がんを“兵糧攻め”にする治療だ。通常は、血管造影検査しながら行われる。 血管造影に用いたカテーテルの先端を肝動脈まで進め、塞栓物質を注入し、 肝動脈を詰まらる。 近年では、抗がん剤と肝がんに取り込まれやすい 造影剤を混ぜてカテーテルを通じて投与し、その後に塞栓物質を注入する 「肝動脈化学塞栓療法」(TACE)が施行される。TACE/TAEは、がんの個数に 関係なく施行でき、他の治療と併用して行われることもある。 適応の幅が広いので、最近はたくさんの患者さんに行われている。 肝動注化学療法(TAI)は、血管造影に用いたカテーテルから抗がん剤のみを 注入する。


放射線治療

放射線治療は、骨に転移したときなどの疼痛緩和や、脳への転移に対する治療、 血管(門脈、静脈)に広がったがんに対する治療などを目的に行われることがある。 肝臓に放射線をあてると正常な肝細胞に悪影響を与えるので、肝がん自体の治療が 行われる場合には、細心の注意が払われる。最近は、陽子線、重粒子線など、 放射線をあてる範囲を絞り込める放射線治療が肝がんの治療に有効と考えられている。

化学療法(抗がん剤治療)

肝がんの抗がん剤治療には、前述した「肝動注化学療法」と「全身化学療法」がある。 抗がん剤治療は、局所的な治療で効果が期待できない場合などに行われる。


肝移植

肝臓をすべて摘出して、ドナー(臓器提供者)からの肝臓を移植する治療法だ。 肝切除が適応にならないほど肝機能が低下した肝硬変(肝障害度C) の場合に選択肢となります。肝がんにおける適応は、転移がないなど限られる。 肝移植はどこの施設でも行えるものではありません。


難治性腹水に対するCART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)について

CARTとは腹水濾過濃縮再静注法のことで、肝硬変や癌などによって貯まった腹水を濾過濃縮して、 癌細胞や細菌を除去し、アルブミンなどの有用なタンパク成分を回収する治療法だ。 1981年より保険認可されている。


腹水の原因

肝硬変が進行すると、腹水が貯留するようになる。肝硬変に伴う腹水貯留の メカニズムの詳細は不明な点もあるが、 血液中の蛋白質であるアルブミンの 低下が関係していると言われている。アルブミンは肝臓で合成されるため、 肝硬変で肝臓の機能が衰えると満足にアルブミンが生成できなくなり、 結果として血液中のアルブミン濃度が低下する。これにより血液の浸透圧が低くなり、 血液中の水分が血管外へと漏れ出してしまう。腹腔内へ水分が漏出すると 腹水として現れるようになる。他には、胸水や手足の浮腫みとしても現れる。 腹水中にもアルブミンは含まれており、腹水を繰り返し抜くことにより腹水中の アルブミンを失い、結果として血液中のアルブミンまで低下してしまう。 CARTでは、自分自身の腹水に含まれるアルブミンを濃縮し再び自分の体内に戻すので、 腹水を抜くことによるアルブミンの喪失を防げる。更に、人の血液から精製される アルブミン製剤と異なり、自分自身のものであるので、ウイルス感染やアレルギー症状を 起こす可能性も極めて低くなる。また、比較的大量に腹水を除水できるので、 早期に腹部膨満による苦痛が軽減され、食事摂取可能となることもある。
よくある合併症としては、濃縮した腹水を体内に戻した後に発熱することがあるが 一時的なものであることがほとんどだ。 腹水中に感染をおこしている場合(特発性細菌性腹膜炎と言います)は、 腹水中に細菌が多く混在しているので戻さない。また、癌による腹水の場合は、 腹水中に癌細胞が多く存在するため、濾過する際にフィルターの目詰まりを起こすことがある。


肝臓がんの化学療法「インターフェロン併用5FU動注化学療法」「肝動脈塞栓術」

肝がん患者さんの 予後を決めるのは、どういう因子なのか検討してみた。解析の結果、 予後を決めるのは肝機能因子 (つまり肝機能が良いか悪いか)であり、 肝がん因子(がんの大きさなど)自体はあまり重要ではない。 ただし門脈腫瘍塞栓(門脈が肝がんによって閉塞してしまった状態)だけは、 予後不良因子となる。肝臓の中にある門脈という大事な血管 (腸で吸収した栄養分を肝臓に送り届けている)にがんが浸潤し、 やがては肝がんによって門脈が閉塞してしまうことがある。 こうなると肝臓に栄養が届かなくなり、急速に肝不全が進行する。 がんの浸潤範囲によるが、積極的な治療ができない場合、 残された時間は半年くらいだ。門脈腫瘍塞栓となった肝がんは、 多くの場合、肝臓全体にがんが広がっており、手術、局所療法、塞栓術、 放射線治療などは、ほとんどの患者さんで治療の適応外となる。 そこで、残された方法が化学療法(抗がん剤)です。
抗がん剤治療のポイントは、いかに治療効果を高めて、いかに副作用を抑 えられるかだ。そのためにさまざまな工夫をしてできあがったのが 「インターフェロン併用5FU動注化学療法」だ。
本来インターフェロンは、肝炎ウイルスを駆除するときに用いる薬だ。 インターフェロンは体内にも存在する物質で、さまざまな作用をもっている。 その一つに抗がん作用がある。以前より肝がん治療に使われている 5FU(ファイブエフユー)という抗がん剤と併用することによって、 相乗効果が得られることが新たにわかった。
5FUは1回で注射するよりも、持続的に注射したほうが効果が高いことがわかっている。 このために5FUは、24時間、5日間かけて(つまり120時間持続)注射する。
普通の点滴注射では全身に薬が行きわたるので、肝臓以外の目的としない臓器にも 同じ濃度の抗がん剤が届く。これは効率が悪いばかりではなく、 副作用の懸念も高まる。肝がんは、肝動脈から養われている。 そこで肝動脈に直接細い管 (カテーテル)を植え込んで、抗がん剤を 直接肝動脈に注入(動注)する。このシステムのお陰で、肝がんには 高濃度の抗がん剤が届き、他の部位には直接抗がん剤が流れない。 つまり効果を高め、副作用を抑えることができる。
101人の門脈腫瘍浸潤を伴う進行肝がんの患者さんを対象に治療を行って、 肝がんが完全に消失した患者さんは15人、縮小した患者さんは34人、 合わせて奏功率は101人中49人で49%でした。つまり約半数の患者さんに 効果があった。
裏を返すと、半数の患者さんには効かないう。ほかに有効な治療法のない 進行肝がん、つまり肝臓の中に多発肝がんがあり、さらに門脈浸潤 (右枝、左枝、もしくは本幹がやられている)を伴っている状態の患者さん が適応となる。ただし他の臓器に転移してない状態(他の臓器には 動注では十分な濃度の抗がん剤が届かない)で、コントロール不可能な、 腹水や黄疸がないことが条件になる。なお、最初に触れましたように、 転移性肝がんには行っていないので効果は不明です。
多種のパラメーター、つまり性別、年齢から始まって各種肝機能、 肝がんの形や大きさなどをコンピュータに入力し解析してきたが、 治療前の予測因子は決められませんでした。つまり、やってみないとわからない、 というのが現状だ。しかしコントロール不能な腹水や、黄疸があった場合には、 明らかに厳しい。
効かないときは、抗がん剤を変更する。今回はスペースの関係で触れないが、 効果が期待できるので、「インターフェロン併用5FU動注化学療法」が効かなかったら、 もうダメということはない。
肝動脈に直接抗がん剤を注入するので、1回肝臓を流れた抗がん剤が全身に回るため、 副作用を抑えられる。また、大きな副作用があるようでは、肝硬変がベースにある肝がん の患者さんは適用できないことになる。抗がん剤の副作用としては、 味覚異常、食欲不振、吐き気、粘膜障害(鼻血や口内炎)、下痢、白血球減少などがある。 インターフェロンの副作用としては、発熱、倦怠感、白血球減少などがある。 カテーテル(動注用の管)のトラブルでは、 カテーテルが肝動脈から抜けてしまうことがあり、治療する前に きちんと管が入っているかチェックする。またカテーテルがずれないように、 工夫もしている。
残念ながら、肝がん治療としてのインターフェロンは、いまだに保険適応となっていない。 現在、保険適応の取得を目指して治験が進行中だ。 臨床試験に参加していただく形で治療を行っている。動注カテーテルの植え込みや 血流改変(抗がん剤が効率良く肝臓に流れ、周辺臓器に流れないようにする)に約20万円、 入院費(約20日間)や薬剤費、検査費を含めて50万円。合計70万円ぐらいかかる。 3割負担の方ですと20万円ぐらいの自己負担が必要だ。

肝動脈塞栓術

がんは血液より栄養や酸素を供給されて細胞分裂し、大きくなる。 肝がんの内部には、他のがんと比較すると、とても多くの細かい動脈が入り込んでいる。 このがんを養っている栄養血管(多くは肝動脈)を止め、がんに栄養や 酸素を供給できなくしてしまう(いわゆる兵糧攻め)治療法が、肝動脈塞栓術だ。
肝動脈塞栓術は、山田龍作先生によって日本で開発された治療法で、 確立された技術とカテーテル(血管内に入れる細い管のこと)などの 器具の飛躍的な進歩によって、広く普及した。
手術やラジオ波などの局所療法の前に塞栓術を行うことによって、 腫瘍の勢い(血流)を抑え、次の治療が安全かつ確実に治療できる。
肝がんは再発との戦いです。3年で60%、5年で80%以上の患者さんに再発する。 とくに肝臓のあちらこちらから再発する。この場合も塞栓術が行われる。
「肝動脈を止めてしまって肝臓は大丈夫ですか?」「あと、何回ぐらい塞栓できるのですか?」 「どのくらい塞栓効果はあるのですか?」とよく質問される。肝がんの患者さんの80%以上は 肝硬変を併発しているので、いかに肝機能を保たせながら、肝がんを治療するかがポイントだ。 塞栓する血管の範囲を少なくし、できるだけ肝がんを養っている血管に的を絞って塞栓します。 肝がんは肝動脈のみから養われていますが、肝実質(非がん部)は、門脈と肝動脈から養われている。 なので肝動脈塞栓を行うと肝がんは血流が途絶え壊死するが、非がん部は生き残る。また 塞栓時間も数日から1週間程度で再開通するので、肝臓は大丈夫だ。
1998~2003年までに、のべ2319回の血管造影検査および塞栓術を行った。 そのうち5個を超える多発再発で塞栓術を繰り返し行っている患者さん312人、 のべ725回を対象に生存率を算出した。繰り返しの塞栓術を開始してからの生存率は、 1年83%、3年42%だ。この方々が最初に肝がんと言われてからの生存率は、 1年96%、3年75%、5年55%だ。
塞栓術の平均入院期間は5.5日だ。塞栓術自体が約17万円に入院費や薬剤費、 検査費を含めて約40万円になる。3割負担の患者さんですと、 約12万円の自己負担になる。

肝がんは、慢性肝炎・肝硬変というもう一つの病気を抱えているので、 片方立てれば、片方立たずという場合があり、再発を繰り返すこともある。

福島医大チームが、がん細胞増殖の新要因であるタンパク質を特定できた

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福島医大解剖・組織学講座の植村武文准教授(41)や和栗(わぐり)聡教授(57)らの 研究チームが、がんの原因遺伝子として知られるタンパク質「上皮成長因子受容体(EGFR)」 の量を調節する働きがあるタンパク質の存在を突き止め、がん専門の英科学雑誌 オンコジェネシスに発表した。がん細胞の増殖メカニズムの一端が明らかになり、 研究チームは「将来的な抗がん剤開発に貢献できる」としている。 福島医大が2日発表した。研究チームによると、EGFRは細胞膜上にあり、 正常な細胞が増殖する際に重要な役割を果たすが、がんの増殖にも関わる。 研究チームは過去に、タンパク質「GGA2(ギガツー)」が少なくなるとEGFRは 細胞内の「リソソーム」と呼ばれる場所に運ばれて分解されやすくなる ことを発表していた。 今回、新たに「AP-1」と呼ばれるタンパク質がGGA2と共にEGFRに作用し、 細胞内の「エンドソーム」と呼ばれる場所に来たEGFRを再び細胞膜に戻し、 分解されないようにしていることを突き止めた。 さらに、肺がん、肝細胞がん、大腸がんの一部で、エンドソームにある AP-1の量が多いことを確認した。 AP-1やGGA2の量が低下すると、EGFRは分解されて量が少なくなり、 がん細胞の増殖が抑えられる。AP-1などの量に作用する物質が見つかれば、 抗がん剤開発につながることが期待される。植村准教授は「がん細胞増殖の メカニズムの解明にさらに取り組みたい」と話している。


肝臓がんの予防・治療後の注意

肝臓がんは初期症状がほとんどなく早期発見が難しいが、B型やC型肝炎ウイルスの 感染が原因になる場合が多いため、検査によってこれらの肝炎ウイルスに感染して いないかを知ることが、第一の予防となる。また、すでに肝炎ウイルスに感染している人、 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の患者は、肝臓がん発症のリスクが高いため、 定期的にスクリーニング検査を受け、肝炎ウイルスに感染している際には抗ウイルス療法 を行い肝炎の炎症を抑えることが発がんの抑制につながる。また、アルコールやタバコ との関係も指摘されているため、普段の食生活や、嗜好品などの見直しも大切だ。 自覚症状がなくとも定期健診で肝機能の異常値が指摘された場合は、早めに病院を 受診することも予防につながる。


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