維摩経(ゆいまぎょう)

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維摩経(ゆいまぎょう) (巻上之第二)

弟子品(でしぼん) 第三(だいさん)


爾時(その時) 長者 維摩詰 自念(長者維摩詰自ら念(おも)えらく) 于床(疾に床に寝(い)ぬ)

世尊大慈(世尊、大慈にて) 寧不垂 (なんぞ愍みを垂れたまわざらんや)

佛知其意(仏、その意を知り) 即告舍利弗(すなわち舍利弗に告げたまわく)

汝行 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣りて、疾を問え)

舍利弗 (舍利弗、仏に白して言さく) 世尊(世尊) 我不 堪任 詣彼問疾(我は彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以 者何(所以は何(いか)んとなれば) 憶念 我昔(憶念するに、我、かつて) 曾於林中(林中に於いて) 宴坐 樹下(樹下に宴坐しき)

時 維摩詰 來謂我言(時に、維摩詰来たりて、我に謂(い)って言わく)

舍利弗(唯、舍利弗) 不必是坐(必ずしも、これ坐するを) 宴坐(宴坐と為さず)

夫宴坐者(それ宴坐とは) 不於 三界 現身意(三界に於いて身と意とを現ぜざる) 是為宴坐(これを宴坐と為す)

不起 滅定 (起(た)たず滅定して) 而現諸 威儀 (しかも諸の威儀を現ずる) 是為宴坐(これを宴坐と為す)

不捨 道法 (道法を捨てずして) 而現 凡夫(しかも凡夫の事(俗事)を現ずる) 是為宴坐(これを宴坐と為す)

心不住內(心、内に住せず) 亦不在外(また外に在らざる) 是為宴坐 (これを宴坐と為す)

諸見 不動 諸見に於いて動ぜずして 而修行 三十七品 しかも三十七品を修行する 是為宴坐これを宴坐と為す

不斷煩惱(煩悩を断ぜずして) 而入涅槃(しかも涅槃(寂滅)に入る) 是為宴坐(これを宴坐と為す)

若能如是坐者(もし、よく、かくの如く坐する者は) 佛所 印可 (仏の印可したもう所なり)

時我世尊(時に、世尊) 聞說是語(この語を聞いて) 默然而止(黙然として止め) 不能加 (報を加うること能(あた)わざりき) 故我不任 詣彼 問疾(故に、我、彼れに詣りて疾を問うに任(た)えず)

佛告 大目犍連 (仏、大目揵連に告げたまわく) 汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣りて疾を問え)

目連 白佛言(目連、仏に白して言さく) 世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何んとなれば) 憶念我昔(憶念するに、我、昔) 毘耶離大城 (毘耶離大城に入り) 里巷(里巷の中に於いて) 為諸 居士 說法(諸の居士の為に法を説きき)

時維摩詰(時に、維摩詰) 來謂我言(来たりて、我に謂って言わく)

唯大目連(唯、大目連) 白衣 居士 說法(白衣の居士が為に法を説くこと) 不當如 仁者 所說(まさに仁者の説く所の如くにはすべからず)

夫說法者(それ法(真実)を説くとは) 如法(まさに如法に説くべし)

法無眾生(法には衆生なし) 離眾生 (衆生の垢を離るるが故に)

法無有我(法には我あること無し) 我垢(我垢を離るるが故に)

法無壽命(法には寿命なし) 離生死故(生死を離るるが故に)

法無有人(法には人あること無し) 前後際 斷故(前後際 断ずるが故に)

法常 寂然 (法は常に寂然たり) 諸相(諸相を滅するが故に)

法離於 (法は相を離る) 所緣(所縁なきが故に)

法無 名字 (法には名字なし) 言語 斷故(言語 断ずるが故に)

法無有說(法には説(説明)あること無し) 覺觀(覚観を離るるが故に)

法無形相(法には形相なし) 如虛空故(虚空の如きが故に)



法無 戲論 (法には戯論なし) 畢竟 空故(畢竟空なるが故に)

法無 我所 (法には我所なし) 離我所故(我所を離るるが故に)

法無 分別 (法には分別なし) 離諸 (諸の識を離るるが故に)

法無有 (法には比あること無し) 相待(相待なきが故に)

法不屬因(法は因に属せず) 不在緣故 (縁に在らざるが故に)

法同 法性 (法は法性に同じ) 諸法(諸法に入るが故に)

法隨於 (法は如に随う) 無所隨故 (随う所なきが故に)

法住 實際 (法は実際に住す) 諸邊 不動故(諸辺に動ぜざるが故なり)

法無動搖(法は動揺なし) 不依 六塵(六塵に依らざるが故に)

法無 去來 (法には去来なし) 不住(常に不住なるが故に)

法順空隨無相(法は空に順(した)がい、無相に随い) 無作 (無作に応ず)

法離好醜(法には好醜を離る)

法無增損 (法には増損(増減)なし)

法無生滅 (法には生滅なし)

法無所 (法には帰する所なし)

法過眼耳鼻舌身心(法は眼耳鼻舌身心を過ぐ) 法無 高下 (法には高下なし)

法常住不動(法は常住にして不動なり)

法離一切觀行 (法は一切の観行を離る )

唯大目連(唯(ゆい)、大目連) 法相如是(法の相はかくの如し)

豈可說乎(あに説くべけんや) 夫說法者(それ、法を説くとは) 無說無示(説くこと無く、示すこと無し)

其聽法者(それ、法を聴くとは) 無聞無得(聞くこと無く、得ること無し)

譬如 幻士 為幻人說法(譬えば、幻士の幻人の為に法を説くが如し)

當建是意(まさに、この意を建てて) 而為說法(しかも為に法を説くべし)

當了眾生(まさに、衆生の) 有利鈍(根に利鈍あることを了(了知)して) 善於 知見 (よく知見に於いて) 無所 罣礙 (罣礙する所なく) 以大悲心(大悲心を以って) 讚于大乘(大乗を讃じ) 念報佛恩 不斷 三寶 (仏恩に報じて三宝を断たしめざることを念じ) 然後說法(然る後に、法を説くべし)

維摩詰(維摩詰) 說是法時(この法を説くの時) 八百居士(八百の居士) 發阿耨多羅三藐三菩提心(阿耨多羅三藐三菩提心を発せり)

我無此 (我に、この辯なし) 是故 不任詣彼 問疾(この故に、彼れに詣りて、疾を問うに任(た)えず)

佛告 大迦葉 (仏、大迦葉に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

迦葉白佛言(迦葉、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに、堪任せず) 所以者何(所以は何んとなれば)

憶念我昔(憶念するに、我、昔) 於貧里而 行乞 (貧里に於いて行乞しき)

時 維摩詰(時に、維摩詰) 來謂我言(来たりて、我に謂って言わく)

唯大迦葉(唯(ゆい)、大迦葉) 有慈悲心(慈悲心あれども) 而不能普(普(あまね)きこと能わず) 捨豪富 從貧乞(豪富なるを捨て、貧より乞う)

迦葉(迦葉) 住平等法(平等法に住し) 行乞食(まさに次に行きて、食を乞うべし)

為不食故(食せざらんが為の故に) 應行 乞食 (まさに行きて食を乞うべし)

為壞 和合相(和合相を壊(え、破壊)せんが為の故に) 應取 揣食 (まさに揣食を取るべし)

不受(受けざらんが為の故に) 應受彼食(まさに彼の食を受くべし)

空聚(空聚の想を以って) 入於聚落(聚落に入り) 所見 (見る所の色は盲と等しく) 所聞 與響等(聞く所の声は響きと等しく) 所嗅 與風等(嗅ぐ所の香は風と等しく) 所食味 不分別(食する所の味は分別せず)

諸觸 如智證(諸触を受けて智証の如く)

諸法 如幻相(諸法は幻の相の如く)

自性 (自性なく) 他性 (他性なく) 本自不然(本より自ずから然らず) 今則無滅 (今則ち滅すること無しと知れ)

迦葉(迦葉) 若能不捨 八邪 (もし、よく八邪を捨てずして) 八解脫 (八解脱に入り)

邪相 (邪相を以って) 入正法(正法に入り)

以一食施一切(一食を以って一切に施し) 供養 諸佛 及 賢聖 (諸仏および衆の賢聖を供養して) 然後可食 (しかる後に食うべし)

如是食者(かくの如く食う者) 非有煩惱(煩悩あるに非ず) 非離煩惱(煩悩を離るるに非ず)

非入 定意 (定意に入るに非ず) 非起定意(定意を起つに非ず)

非住世間(世間に住するに非ず) 非住涅槃(涅槃に住するに非ず)

其有施者(それ施すことある者にも) 無大福(大福なく) 無小福(小福なく) 不為益(益を為さず) 不為損(損を為さず) 是為正入佛道(これ、まさしく、仏道に入りて) 不依 聲聞 (声聞に依らずと為す)

迦葉(迦葉) 若如是食(もし、かくの如く食せば) 為不空 食人之施也(人の施しを食して空しからずと為すなり)

時我世尊(時に、我、世尊) 聞說是語(この語を説くを聞き) 得未曾有(未曽有なることを得(う))

即於一切菩薩(すなわち一切の菩薩に於いて) 深起敬心(深く敬心を起こし) 復作是念(またこの念を作さく)

斯有家名(この家名をもつもの(在家)の) 辯才智慧(辯才、智慧は、) 乃能如是(すなわちよく、かくの如し) 其誰聞此(それ、誰か、これを聞きて) 不發 阿耨多羅三藐三菩提心(阿耨多羅三藐三菩提心を発さざらんや)

我從是來(我、これよりこのかた) 不復勸人 以 聲聞 辟支佛(また声聞、辟支仏の行を以って、人に勧めず) 是故 不任詣彼 問疾(この故に、彼れに詣りて、疾を問うに任(た)えず)

佛告 須菩提 (仏、須菩提に告げたまわく) 汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

須菩提(須菩提) 白佛言(仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任 詣彼 問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何んとなれば) 憶念我昔(憶念するに、我、昔) 入其舍從乞食(その舎(いえ)に入り、従って食を乞えり)

時維摩詰(時に、維摩詰) 取我缽 盛滿飯(我が鉢を取りて、飯を盛り満し) 謂我言(我に謂って言わく)

唯須菩提(唯、須菩提) 若能於食等者(もし、よく食に於いて等しくば) 諸法亦等(諸法もまた等し) 諸法等者(諸法等しくば) 於食亦等(食に於いてもまた等し)

如是行 (かくの如く乞を行ぜば) 乃可取食(すなわち食を取るべし)

若須菩提(もし、須菩提) 不斷 婬怒癡 (婬怒癡を断ぜずして) 亦不與 (与倶ならず) 不壞於身(身を壊せずして) 而隨 一相 (一相に随い) 不滅癡愛)癡愛を滅せずして 起於 明脫 )明脱を起こし 五逆(五逆の相を以って) 而得解脫(解脱を得) 亦解不縛 (また、解にあらず、縛にあらず)

不見 四諦 (四諦を見ずに) 非不見諦(諦を見ざるに非ず)

非得 (果を得るに非ず) 非不得果(果を得ざるに非ず)

非凡夫(凡夫に非ず) 非離 凡夫法 (凡夫の法を離るるに非ず)

聖人 (聖人に非ず) 非不聖人 (聖人ならざるに非ず)

雖成就 一切法 (一切法を成就すといえども) 而離 諸法(諸法の相を離れば) 乃可取食(すなわち食を取るべし)

若須菩提(もし、須菩提) 不見佛 不聞法(仏を見ず、法を聞かず) 彼外道六師(彼の外道の六師) 富蘭那迦葉 (富蘭那迦葉) 末伽梨拘賒梨子 (末伽梨拘賖梨子) 刪闍夜毘羅胝子 (刪闍夜毘羅胝子) 阿耆多翅舍欽婆羅 (阿耆多翅舎欽婆羅) 迦羅鳩馱迦旃延 (迦羅鳩駄迦旋延) 尼犍陀若提子(尼犍陀若提子等) 是汝之師(これ汝が師にして) 因其出家(それによりて出家し) 彼師所墮(彼の師の堕する所に) 汝亦隨墮(汝もまた随って堕せば) 乃可取食(すなわち食を取るべし)

若須菩提(もし、須菩提) 入諸邪見(諸の邪見に入りて) 不到彼岸(彼岸に到らず)

八難 (八難に於いて) 不得無難(難なきを得ず)

同於煩惱(煩悩に同じくして) 離清淨法(清浄の法を離る)

汝得 無諍三昧 (汝、無諍三昧を得) 一切眾生(一切衆生も) 亦得是定(またこの定を得) 其施汝者(それ汝に施す者は) 不名福田(福田と名づけず)

供養汝者(汝に供養する者は) 墮三惡道(三悪道に堕し) 為與 眾魔共一手(為に衆魔と一手を共に) 作諸 勞侶 (諸の労侶となりて) 汝與眾魔(汝と衆魔) 及諸 塵勞 (および諸の塵労等と) 等無有異(異なりあること無く) 於一切眾生(一切衆生に於いて) 而有怨心(怨心あり) 謗諸佛(諸仏を謗り) 毀於法(法を毀(そし)り) 不入眾數(衆(仏弟子)の数に入らずして) 終不得滅度(ついに滅度を得ず)

汝若如是(汝、もしかくの如くば) 乃可取食(すなわち食を取るべし)

時我世尊(時に、我、世尊) 聞此語 茫然(この語を聞きて、茫然として) 不識 是何言(これ何の言かを識らず) 不知 以何答(何を以って答えんかを知らず)

便置缽 欲出其舍(すなわち、鉢を置いて、その舎を出でんと欲す)

維摩詰言(維摩詰言わく) 唯須菩提(唯、須菩提) 取缽勿懼(鉢を提取(と)りて懼(おそ)るることなかれ)

於意云何(意に於いて云何) 如來所作 化人(如来の作る所の化人) 若以是事詰(もしこの事を以って詰(なじ)らんに) 寧有懼不(むしろ懼るること有りやいなや)

我言(我言わく) 不也(いななり)

維摩詰言(維摩詰言わく)

一切諸法(一切の諸法は) 如幻化相(幻化の相の如し)

汝今 不應有所懼也(汝は今、まさに懼るる所あるべからず)

所以者何(所以は何んとなれば) 一切言說(一切の言説は) 不離是相(この相を離れず)

至於智者(智者に至りては) 不著文字故(文字に著せざるが故に) 無所懼(懼るる所なし)

何以故(何を以っての故に) 文字性 (文字の性は離なれば) 無有文字(文字あること無し)

是則解脫(これ、すなわち解脱なり) 解脫相者(解脱の相とは) 則諸法也(すなわち諸法なり)

維摩詰(維摩詰) 說是法時(この法を説く時) 二百天子(二百の天子) 法眼淨 (法眼浄を得たり)

故我 不任 詣彼問疾(故に我、彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

佛告 富樓那彌多羅尼子 (仏、富楼那弥多羅尼子に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

富樓那 白佛言(富楼那、仏に白して言さく) 世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何んとなれば) 憶念我昔(憶念するに、我、昔) 於大林中(大林の中に於いて) 在一樹下(一樹の下に在りて) 為諸新學(諸の新学の) 比丘說法(比丘の為に法を説きき)

時維摩詰(時に、維摩詰来たりて) 來謂我言(我に謂って言わく) 唯富樓那(唯、富楼那) 先當入 (先に定に入り) 此人心(この人の心を観じて) 然後說法(しかる後に、法を説くべし)

無以 穢食 置於寶器(穢き食を以って、宝器に置くことなかれ) 當知是比丘 心之所念(まさに、この比丘の心の念ずる所を知るべし)

無以 琉璃 (瑠璃を以って) 同彼 水精 (彼の水精に同じうすることなかれ )

汝不能知 眾生 根源 (汝は、衆生の根源を知ること能わずして) 無得 發起 以小乘法(発起するに小乗の法を以ってすることを得ることなかれ)

彼自無瘡(彼、自ら瘡(きず)なし) 之也(これを傷うことなかれ)

欲行大道(大道を行かんと欲するに) 莫示 小徑 (小径を示すことなかれ)

無以大海 內於 牛跡 (大海を以って牛跡に内(い)るることなかれ) 無以日光(日光を以って) 等彼 螢火 (彼の蛍火に等しうすることなかれ)

富樓那(富楼那) 此比丘 久發 大乘心(この比丘は、久しく大乗の心を発し) 中忘此意(中ごろ、この意を忘れたるなり)

如何以小乘法(如何(いか)んぞ、小乗の法を以って) 而教導之(これを教導するや)

我觀小乘(我、小乗を観るに) 智慧微淺(智慧微浅なること) 猶如盲人(なお盲人の如く) 不能分別 一切眾生 根之利鈍(一切の衆生の根の利鈍を分別すること能わず)

時維摩詰(時に、維摩詰) 即入 三昧 (すなわち三昧に入り) 令此比丘(この比丘をして) 自識 宿命 (自ら宿命に) 曾於五百佛所(かつて五百の仏の所に於いて) 植眾 德本 (もろもろの徳本を植え) 迴向 阿耨多羅三藐三菩提(阿耨多羅三藐三菩提に廻向せしことを識らしめしに) 即時 豁然 (即時に豁然として) 還得本心(ふたたび本心を得たり)

於是諸比丘(ここに於いて、諸の比丘は) 稽首 禮維摩 詰足(稽首して維摩詰の足を礼せり)

時 維摩詰(時に、維摩詰) 因為說法(為に法を説くに因り) 於阿耨多羅三藐三菩提(阿耨多羅三藐三菩提に於いて) 不復退轉(また退転せざらしむ)

聲聞不觀人根(我、念えらく声聞は、人の根を観ぜずして) 不應說法(まさに法を説くべからず) 是故(この故に) 不任 詣彼 問疾(彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

佛告 摩訶迦旃延 (仏、摩訶迦旃延に告げたまわく) 汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

迦旃延 白佛言(迦旃延、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何んとなれば) 憶念昔者(憶念するに、昔) 佛為諸比丘(仏諸の比丘の為に) 略說法要(略して法の要を説きたまいしに) 我即於後(我は、すなわち、後に於いて) 敷演 其義(その義(ぎ、意味)を敷演せり) 謂無常義(謂わく無常の義) 苦義 空義(苦の義、空の義) 無我義 寂滅義(無我の義、寂滅の義)

時維摩詰(時に、維摩詰来たりて) 來謂我言(我に謂って言わく)

唯 迦旃延(唯、迦旃延) 無以 生滅 心行 (生滅の心行を以って) 說實相法(実相の法を説くことなかれ)

迦旃延(迦旃延) 諸法 畢竟 (諸法は畢竟して) 不生不滅(不生不滅なる) 是無常義(これ無常の義なり)

五受陰 (五受陰は) 洞達(洞達するに、空にして) 無所起(起こる所無き) 是苦義(これ苦の義なり)

諸法究竟(諸法は、究竟して) 所有 (所有なき) 是空義(これ空の義なり)

於我無我 而不二(我と無我とに於いて、不二なる) 是無我義(これ無我の義なり)

法本不然 (法は本より然らず) 今則無滅(今、すなわち、滅すること無し) 是寂滅義(これ寂滅の義なり)

說是法時(この法を説きし時) 彼諸比丘(彼の諸の比丘) 心得解脫(心に解脱を得たり)

故我(故に我は) 不任 詣彼 問疾(彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

佛告 阿那律 (仏、阿那律に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

阿那律 白佛言(阿那律、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何となれば) 憶念我昔(憶念するに、我、昔) 於一處 經行 (一処に於いて経行しき)

時有梵王(時に、ある梵王) 名曰嚴淨(名を厳浄というもの) 與萬 (万の梵と倶に) 放淨光明(浄光明を放ちて) 來詣 我所(我が所に来詣し) 稽首作禮(稽首して礼をなし) 問我言(我に問うて言わく)

幾何 阿那律(幾何ぞ、阿那律が) 天眼所見(天眼の見る所は)

我即答言(我、すなわち、答えて言わく) 仁者(仁者) 吾見此釋迦牟尼佛土(吾は、この釈迦牟尼仏の土の) 三千大千世界(三千大千世界を見ること) 如觀掌中 菴摩勒果 (掌中の菴摩勒果を観るが如し)

時維摩詰(時に、維摩詰来たりて) 來謂我言(我に謂って言わく) 唯阿那律(唯、阿那律) 天眼所見(天眼に見らるるものは) 為作相耶(相を作すと為すや)

無作相耶(相を作すこと無しと為すや)

假使作相(もし、相を作さば) 則與 外道 五通(すなわち外道の五通と等し)

若無作相(もし、相を作すこと無くば) 即是 無為 (すなわち、これ無為なり) 不應有見(まさに見ること有るべからず)

世尊(世尊) 我時默然(我、時に黙然たりき)

彼諸梵 聞其言(彼の諸の梵たち、その言を聞いて) 得未曾有(未曽有を得)

即為作禮(すなわち為に礼を作して) 而問曰(問うて曰く) 世孰有 真天眼者(世に、たれか真の天眼をもつ者なる)

維摩詰言(維摩詰言わく) 有佛世尊(仏、世尊あり)

得真天眼(真の天眼を得たもう) 常在三昧(常に三昧に在りて) 悉見諸佛國(悉く諸仏の国を見たもうに) 不以 二相 (二相を以ってしたまわず)

於是 嚴淨梵王(ここに於いて、厳浄梵王) 及其眷屬(および、その眷属の) 五百梵天(五百の梵天たち) 皆發 阿耨多羅三藐三菩提心(皆、阿耨多羅三藐三菩提心を発し) 禮維摩詰 足已(維摩詰の足に礼しおわりて) 忽然 不現(忽然として現れざりき) 故我 不任 詣彼問疾(故に我は、彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

佛告 優波離 (仏、優婆離に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

優波離 白佛言(優婆離、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何となれば) 憶念昔者(憶念するに、昔) 有二比丘(二比丘あり) 律行 以為恥(律行を犯し、以って恥と為し) 不敢問佛(あえて仏に問いたてまつらず)

來問我言(来たりて我に問うて言わく) 唯優波離(唯、優婆離) 我等犯律(我等は律を犯し) 誠以為恥(誠に以って恥と為し) 不敢問佛(あえて仏に問いたてまつらず) 願解 疑悔 (願わくは、疑悔を解き) 得免斯咎(その咎(とが)を免るることを得しめよ) 我即 為其 如法 解說(我は、すなわち、その為に、如法に解説せり)

時 維摩詰(時に、維摩詰) 來謂 我言(来たりて、我に謂って言わく) 唯 優波離(唯、優婆離) 無重增 此二比丘罪(重ねて、この二比丘の罪を増すことなかれ)

當直除滅(まさに、ただちに(罪を)除滅すべし)

勿擾其心(その心を擾(みだ)すことなかれ)

所以者何(所以は何んとなれば) 彼罪性 不在內(彼の罪性は内に在らず) 不在外(外に在らず) 不在中間(中間にも在らず)

如佛所說(仏の所説の如きは) 心垢故 眾生垢(心垢つくが故に、衆生垢つく)

心淨故 眾生淨(心浄きが故に、衆生浄し)

如其心然(その心の然るが如く) 罪垢亦然(罪の垢もまた然り)

諸法亦然(諸法もまた然り) 不出於如(如(にょ、真如)を出でず)

如 優波離(優婆離の如きは) 心相 (心相を以って) 得 解脫時(解脱を得る時) 寧有垢不(むしろ垢ありやいなや)

我言(我言わく) 不也 (いな)

維摩詰 言(維摩詰言わく) 一切眾生(一切の衆生の) 心相無垢(心相の垢無きことも) 亦復如是(またかくの如し)

唯 優波離(唯、優婆離) 妄想 是垢(妄想はこれ垢なり) 無妄想 是淨(妄想なきはこれ浄なり)

顛倒 是垢(顛倒はこれ垢なり) 無顛倒 是淨(顛倒なきはこれ浄なり) 取我是垢(我を取るはこれ垢なり) 不取我是淨(我を取らざるはこれ浄なり)

優波離(優婆離) 一切法 生滅不住(一切の法(物事)の生滅は住まらずして) 如幻如電(幻の如く、電(電光)の如し)

諸法 不相待(諸法は相い待たず) 乃至 一念不住(ないし一念(一瞬)も住まらず)

諸法皆 妄見(諸法は、皆妄見なり) 如夢如 (夢の如く、炎の如く) 如水中月(水中の月の如く) 如鏡中像(鏡中の像の如く) 以妄想生(妄想を以って生ず)

其知此者(それ、これを知れば) 是名奉律(これ律を奉ずと名づく) 其知此者(それ、これを知れば) 是名善解(これ善く解すと名づく)

於是 二比丘言(ここに於いて、二比丘言わく) 上智哉(上の智(智慧)なるかな) 是優波離(これ、優婆離の) 所不能及(及ぶこと能わざる所なり) 持律之上((優婆離は)持律の上なるも) 而不能說(説くこと能わず)

我即答言(我、すなわち答えて言わく) 自捨如來(自ずから、如来を捨(お)けば) 未有 聲聞及菩薩(いまだ声聞および菩薩の) 能制 其樂說之 (よく、その説くを楽しむ辯を制するもの有らず) 其智慧明達(その智慧の明達なること) 為若此也(かくのごとしと為す)

時 二比丘(時に、二比丘は) 疑悔即除(疑悔すなわち除こり) 發 阿耨多羅三藐三菩提心(阿耨多羅三藐三菩提心を発して) 作是願言(この願を作して言わく)

令一切 眾生(一切の衆生をして) 皆得是辯(みなこの辯を得しめん) 故我不任 詣彼問疾(故に我は、彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

佛告 羅睺羅(仏、羅睺羅に告げたまわく) 汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

羅睺羅 白佛言(羅睺羅、仏に白して言さく) 世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何となれば) 憶念昔時(憶念するに、昔) 毘耶離 諸長者子(毘耶離の諸の長者子) 來詣我所(来たりて我が所に詣り) 稽首作禮(稽首して礼を作して) 問我言(我に問うて言わく)

唯 羅睺羅(唯、羅睺羅) 汝 佛之子(汝は仏の子なり) 轉輪王(転輪王の位を捨てて) 出家為道(出家を道と為す) 其出家者(それ、出家には) 有何等利(何等の利かある)

我即如法(我、すなわち如法に) 為說出家 功德之利(為に出家の功徳の利を説きけり)

時維摩詰(時に、維摩詰来たりて) 來謂我言(我に謂って言わく)

唯 羅睺羅(唯、羅睺羅) 不應說 出家功德之利(まさに出家の功徳の利を説くべからず)

所以者何(所以は何となれば) 無利 無功德(利なく功徳なき) 是為出家(これを出家と為す)

有為法(有為法なれば) 可說有利 有功德(利あり功徳ありと説くべし)

夫出家者(それ、出家とは) 無為法 (無為法と為す) 無為法中(無為法の中には) 無利 無功德(利なく功徳なし)

羅睺羅(羅睺羅) 出家者(出家とは) 無彼無此(彼れなく此れなく) 亦無中間(また中間もなく) 六十二見 (六十二見を離れ) 處於涅槃(涅槃に処す)

智者所受(智者の受くる所) 聖所行處(聖(聖者)の行ずる所の処なり) 降伏眾魔(衆魔を降伏し) 五道 (五道を度し) 五眼 (五眼を浄め) 五力 (五力を得) 五根 (五根を立てて) 不惱於彼(彼(衆魔)に悩まされず)

雜惡 (衆の雑悪を離れ) 諸外道(諸の外道を摧き) 超越 假名 出淤泥(仮名を超越して汚泥を出で) 繫著 (繫著なく) 我所 (我所なく) 內懷喜(内に喜びを懐きて) 護彼意 (彼れの意を護り) 隨 禪定(禅定に随い) 離 眾過(衆の過(トガ)を離る) 若能如是(もしよく、かくの如くならば) 是 真出家(これ真の出家なり)

於是 維摩詰(ここに於いて、維摩詰) 語 諸長者子(諸の長者子に語らく) 汝等 於正法中(汝等、正法の中に於いて) 宜共出家(よろしく共に出家すべし)

所以者何(所以は何んとならば) 佛世難值(仏の世には値(あ)い難し) 諸長者子言 居士(諸の長者子言わく 居士) 我聞佛言(我聞けり、仏言(の)たまわく) 父母不聽(父母聴(ゆる)さざれば) 不得出家(出家することを得ずと)

維摩詰 言(維摩詰言わく) 然汝等便(然り、汝等) 發 阿耨多羅三藐三菩提心(すなわち阿耨多羅三藐三菩提心を発す) 是即 出家(これすなわち出家なり) 是即 具足 (これすなわち具足なり)

爾時 三十二長者子(その時、三十二の長者子は) 皆發 阿耨多羅三藐三菩提心(皆阿耨多羅三藐三菩提心を発せり) 故我 不任詣彼 問疾(故に我は、彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

佛告 阿難 (仏、阿難に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

阿難 白佛言(阿難、仏に白して言さく) 世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何となれば) 憶念昔時(憶念するに、昔) 世尊 身小有疾(世尊が身に、少しく疾あり) 當用牛乳(まさに牛乳を用うべかりき)

我即持缽(我は、すなわち鉢を持ち) 詣大婆羅門家(大婆羅門の家に詣りて) 門下立(門のもとに立てり)

時維摩詰(時に、維摩詰来たりて) 來謂我言(我に謂って言わく)

唯阿難(唯、阿難) 何為 晨朝 (何為(なんす)れぞ、晨朝に) 持缽住此(鉢を持ちて、ここに住す)

我言(我言わく) 居士(居士) 世尊身小有疾(世尊が身に、少しく疾あり)

當用牛乳(まさに牛乳を用うべし) 故來至此(故に来たりて、ここに至る)

維摩詰言(維摩詰言わく) 止止阿難(止めよ止めよ、阿難)

莫作是語(この語を作すことなかれ) 如來身者(如来が身は) 金剛 之體(金剛の体なり) 諸惡已斷(諸の悪は、すでに断じ) 眾善普會(衆の善は、あまねく会(あつ)まる) 當有何疾(まさに何の疾かあるべき) 當有何惱(まさに何の悩みかあるべき) 默往阿難(黙して往け阿難) 勿謗如來(如来を謗るなかれ)

莫使異人(異人をして) 聞此 麤言 (この麤言を聞かしむることなかれ)

無令大威德諸天(大威徳の諸天) 及他方淨土(および他方の浄土の) 諸來菩薩(諸来の菩薩をして) 得聞斯語(この語を聞くを得しむることなかれ)

阿難(阿難) 轉輪聖王(転輪聖王は) 以少福故(少しの福を以っての故にすら) 尚得無病(なお病の無きことを得たり) 豈況如來(あに、況や如来) 無量福會(無量の福の会(あつ)まれる) 普勝者哉(普く勝れたる者をや)

行矣阿難(行け、阿難) 勿使我等(我等をして) 受斯恥也(この恥を受けしむることなかれ)

外道 梵志 (外道、梵志) 若聞此語(もしこの語を聞かば) 當作是 (まさに、この念を作すべし) 何名為師(何ぞ名づけて師とせん) 自疾不能救(自らの疾すら救うこと能わずして) 而能救諸疾(よく諸の疾(人)を救わんや)

可密速去(仁密(ひそ)かに、速やかに去るべし) 勿使人聞(人をして聞かしむることなかれ)

當知阿難(まさに知るべし、阿難) 諸如來身(諸の如来の身は) 即是法身(すなわち、これ法身なり)

思欲(思欲の身には非ざるなり) 佛為世尊(仏は世尊たり)

過於三界(三界に過ぎたり)

佛身 無漏 (仏の身は、無漏なり) 已盡(諸の漏すでに尽く) 佛身 無為 (仏の身は無為で) 不墮諸數((有為の)諸数に堕せず)

如此之身(かくの如きの身に) 當有何疾(まさに何の疾ぞあるべき) 當有何惱(まさに何の悩みぞあるべき)

時我世尊(時に、我は、世尊) 實懷慚愧(実に慚愧を懐く) 得無近佛 而 聽耶(仏に近づきつつ、しかも聴くことに謬つこと無きを得んや) 即聞空中聲 曰(すなわち空中の声を聞き、曰く) 阿難(阿難) 如居士言(居士の言の如し) 但為佛出 五濁 惡世(ただ仏、五濁の世に、出でたもうが為に) 現行斯法(この法を現行し) 度脫眾生(衆生を度脱したまえるのみ)

行矣阿難(行け、阿難) 取乳勿慚(乳を取りて慚(は)づることなかれ)

世尊(世尊) 維摩詰智慧辯才(維摩詰が智慧と辯才は) 為若此也(かくの如しと為す) 是故 不任 詣彼問疾(この故に、彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

如是 五百大弟子(かくの如く、五百の大弟子) 各各向佛(各々仏に向かいて) 說其 本緣 (その本縁を説き) 稱述 維摩詰所言(維摩詰の言う所を称述して) 皆曰 不任詣彼問疾(皆曰く彼れに詣りて、疾を問うに任えず)


(( 仏国品第一 )) (( 方便品第二 )) (( 弟子品第三 )) (( 菩薩品第四 )) (( 文殊師利問疾品第五 )) (( 不思議品第六 )) (( 観衆生品第七 )) (( 仏道品第八 )) (( 入不二法門品第九 )) (( 香積品仏品第十 )) (( 菩薩行品第十一 )) (( 見阿閦仏品第十二 )) (( 法供養品第十三 )) (( 嘱累品第十四 ))


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