維摩経(ゆいまぎょう)

元に戻る 新着の囲碁棋譜

(( 仏国品第一 )) (( 方便品第二 )) (( 弟子品第三 )) (( 菩薩品第四 )) (( 文殊師利問疾品第五 )) (( 不思議品第六 )) (( 観衆生品第七 )) (( 仏道品第八 )) (( 入不二法門品第九 )) (( 香積品仏品第十 )) (( 菩薩行品第十一 )) (( 見阿閦仏品第十二 )) (( 法供養品第十三 )) (( 嘱累品第十四 ))


維摩経(ゆいまぎょう) (巻上之第三)

菩薩品第四(ぼさつぼんだいし)


於是佛告 彌勒菩薩 (ここに於いて仏、弥勒菩薩に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣(いた)り、疾を問え)

彌勒 (弥勒、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不 堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以(ゆえ)は何(いか)んとなれば) 憶念 我昔(憶念するに) 兜率天王 (我、昔、兜卒天王) 及其眷屬(およびその眷属の為に) 不退轉 地之行(不退転地の行(修行)を説けり)

時維摩詰 來謂我言(時に、維摩詰来たりて我に謂(い)って言わく) 彌勒(弥勒) 世尊 授 (世尊は、仁者に、記を授けたまわく) 一生當得 阿耨多羅三藐三菩提 (一生にて、まさに阿耨多羅三藐三菩提を得べし)

為用何生(何(いづれ)の生を用いて) 受記(受記を得たりと為すや)

過去耶(過去(の生)なりや) 未來耶(未来(の生)なりや) 現在耶(現在(の生)なりや) 若過去生(もし過去の生ならば) 過去生已滅(過去の生はすでに滅しぬ) 若未來生(もし未来の生ならば) 未來生未至(未来の生は未だ至らず)

若現在生(もし現在の生ならば) 現在生 無住 (現在の生は無住なり) 如佛所說(仏の所説の如きは) 比丘汝今(比丘、汝が今は) 即時亦生(即時に、また生じ) 亦老亦滅(また老い、また滅す)

若以無生(もし無生を以って) 得受記者(受記を得とせば) 無生 即是 正位 (無生は、すなわちこれ正位なり)

於正位中(正位の中に於いては) 亦無受記(また受記なし) 亦無得 阿耨多羅三藐三菩提(また阿耨多羅三藐三菩提を得ることも無し)

云何彌勒(云何(いかん)ぞ、弥勒) 受一生記乎(一生の記を受くる) 為從如生(如(にょ、真如)の生により) 得受記耶(受記を得と為すや)

為從如滅(如の滅により) 得受記耶(受記を得と為すや)

若以如生(もし如の生を以って) 得受記者(受記を得とせば) 如無有生(如には生あること無し)

若以如滅(もし如の滅を以って) 得受記者(受記を得とせば) 如無有滅(如には滅あること無し)

一切眾生(一切の衆生は) 皆如也(皆如なり)

一切法(一切の法も) 亦如也(また如なり)

聖賢 (衆(もろもろ)の聖賢も) 亦如也(また如なり)

至於彌勒(弥勒に至るまでも) 亦如也(また如なり)

若彌勒(もし弥勒にして) 得受記者(受記を得るならば) 一切眾生(一切の衆生も) 亦應受記(またまさに記を受くべし)

所以者何(所以は何んとなれば) 夫如者 不二不異(それ、如とは不二不異なり)

若彌勒(もし弥勒にして) 得阿耨多羅三藐三菩提者(阿耨多羅三藐三菩提を得るならば) 一切眾生(一切の衆生も) 皆亦應得(皆またまさに得べし)

所以者何(所以は何んとなれば) 一切眾生(一切の衆生は) 菩提(すなわち菩提の相なり)

若彌勒(もし弥勒にして) 得滅度者(滅度(めつど、涅槃)を得るならば) 一切眾生(一切の衆生も) 亦應滅度(またまさに滅度を得べし)

所以者何(所以は何んとなれば) 諸佛知(諸仏は) 一切眾生(一切の衆生は) 畢竟 寂滅(畢竟寂滅す)

即涅槃相(すなわち涅槃の相にして) 不復更滅(また更に滅せずと知りたもう)

是故彌勒(この故に、弥勒) 無以此法(この法を以って) 誘諸天子(諸の天子を誘(まどわ)すことなかれ)

實無發 阿耨多羅三藐三菩提心者(実に阿耨多羅三藐三菩提を発す者なく) 亦無退者(また退く者もなし)

彌勒(弥勒) 當令 此諸天子(まさにこの諸の天子をして) 捨於 分別菩提之見(菩提を分別するの見を捨てしむべし)

所以者何(所以は何んとなれば) 菩提者(菩提とは) 不可 以身得(身を以って得べからず) 不可 以心得(心を以って得べからず)

寂滅是菩提(寂滅は、これ菩提なり) 滅諸相故(諸相を滅するが故に)

不觀是菩提(不観は、これ菩提なり) 離諸緣故(諸縁を離るるが故に)

不行是菩提(不行は、これ菩提なり) 無憶念故(憶念無きが故に)

斷是菩提(断は、これ菩提なり) 捨諸見故(諸見(諸邪見)を捨つるが故に)

離是菩提(離は、これ菩提なり) 離諸妄想故(諸の妄想を離るるが故に)

障是菩提(障は、これ菩提なり) 障諸願故 (諸願を障うるが故に)

是菩提(不入は、これ菩提なり) 無貪著故(貪著なきが故に)

順是菩提(順は、これ菩提なり) 順於如故(如に順ずるが故に)

住是菩提(住は、これ菩提なり) 法性(法性に住するが故に)

至是菩提(至は、これ菩提なり) 實際(実際に至るが故に)

不二是菩提(不二は、これ菩提なり) 離意法故(意(心意)法(外界の事物)を離るるが故に)

等是菩提(等(平等)は、これ菩提なり) 等虛空故(虚空と等しきが故に)

無為是菩提(無為は、これ菩提なり) 無生住滅故(生住滅なきが故に)

知是菩提(知は、これ菩提なり) 了眾生心行故(衆生の心行を了(了知)するが故に)

不會是菩提(不会(ふえ)は、これ菩提なり) 諸入 不會故(諸入(六根六境)の会(あつ)まらざるが故に)

不會是菩提(不会(ふえ)は、これ菩提なり) 諸入 不會故(諸入の会(あつ)まらざるが故に)

假名是菩提(仮名は、これ菩提なり) 名字空故(名字は空なるが故に)

如化是菩提(如化は、これ菩提なり) 無取捨故(取捨なきが故に)

無亂是菩提(無乱は、これ菩提なり) 常自靜故(常に自ら静かなるが故に)

善寂是菩提(善寂は、これ菩提なり) 性清淨故(性清浄なるが故に)

無取是菩提(無取(しゅ、執著)は、これ菩提なり) 攀緣(攀縁を離るるが故に)

無異是菩提(無異は、これ菩提なり) 諸法等故(諸法は等しきが故に)

無比是菩提(無比は、これ菩提なり) 無可喻故(喩うべきもの無きが故に)

微妙是菩提(微妙は、これ菩提なり) 諸法難知故(諸法は知り難きが故に)

世尊(世尊) 維摩詰(維摩詰) 說是法時(この法を説きし時) 二百天子(二百の天子) 得無生法忍(無生法忍を得たり)

故我 不任詣彼問疾(故に我は、彼れに詣りて、疾を問うに任(た)えず)

佛告 光嚴童子 (仏、光厳童子に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

光嚴白 佛言(光厳、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何んとなれば) 憶念我昔(憶念するに、我、昔) 出毘耶離大城(毘耶離大城を出でんとしき) 時維摩詰 方入城(時に、維摩詰、まさに城に入らんとす) 我即為作(我は、すなわち為に礼を作し) 禮而問言(問うて言わく)

居士 從何所來(居士何れの所より来る)

答我言(我に答えて言わく) 吾從道場來(吾は、道場より来たれり)

我問道場者 何所是(我問わく、道場とは、何れの所か、これなる)

答曰(答えて曰く) 直心 是道場(直心は、これ道場なり) 虛假(虚仮なきが故に)

發行 是道場(発行は、これ道場なり) 能辦事故(よく事を辨(べん、処理する)ずるが故に)

深心 是道場(深心は、これ道場なり) 增益 功德故(功徳を増益するが故に)

菩提心 是道場(菩提心は、これ道場なり) 錯謬(錯謬なきが故に)

布施 是道場(布施は、これ道場なり) 不望報故(報酬を望まざるが故に)

持戒 是道場(持戒は、これ道場なり) 得願具故(願の具わるを得るが故に)

忍辱 是道場(忍辱はこれ道場なり) 於諸眾生(諸の衆生に於いて) 心無礙故(心に礙(さわ)り無きが故に)

精進 是道場(精進は、これ道場なり) 懈退(懈退せざるが故)

禪定 是道場(禅定は、これ道場なり) 調柔(心、調柔なるが故に)

智慧 是道場(智慧は、これ道場なり) 現見 諸法故(諸法を現見するが故に)

是道場(慈は、これ道場なり) 等眾生故(衆生を等しくするが故に)

是道場(悲は、これ道場なり) 忍疲苦故(疲苦を忍ぶが故に)

是道場(喜は、これ道場なり) 悅樂法故(法を悦楽するが故に)

是道場(捨は、これ道場なり) 憎愛斷故(憎愛断ずるが故に)

神通 是道場(神通は、これ道場なり) 成就六通故(六通を成就するが故に)

解脫 是道場(解脱は、これ道場なり) 背捨(よく背捨するが故に)

方便 是道場(方便は、これ道場なり) 教化眾生故(衆生を教化するが故に)

四攝 是道場(四摂は、これ道場なり) 攝眾生故(衆生を摂するが故に)

多聞 是道場(多聞は、これ道場なり) 如聞行故(聞くが如く行ずるが故に)

伏心 是道場(伏心は、これ道場なり) 正觀諸法故(正しく諸法を観ずるが故に)

三十七品 是道場(三十七品は、これ道場なり) 有為法(有為法を捨つるが故に)

是道場(諦は、これ道場なり) 不誑世間故(世間を誑(たぶら)かさざるが故に)

緣起 是道場(縁起は、これ道場なり) 無明乃至老死(無明ないし老死は) 皆無盡故(皆尽くること無きが故に)

諸煩惱 是道場(諸の煩悩は、これ道場なり) 知如實故((これによりて遂に)如実を知るが故に)

眾生 是道場(一切の法は、これ道場なり) 知無我故(諸法の空を知るが故に)

降魔 是道場(降魔(ごうま)は、これ道場なり) 不傾動故((心が)傾動(きょうどう)せざるが故に)

三界 是道場(三界(世間、六道)は、これ道場なり) 無所趣故(趣く所なきが故に)

師子吼 是道場(師子吼は、これ道場なり) 無所畏故(畏るる所なきが故に)

無畏 不共法 是道場(力(十力)無畏不共法は、これ道場なり) 無諸過故(諸の過ちなきが故に)

三明 是道場(三明は、これ道場なり) 無餘礙故(余の礙なきが故に)

一念知 一切法 是道場(一念に一切の法を知る、これ道場なり) 成就 一切智(一切智を成就するが故に)

如是善男子(かくの如く、善男子) 菩薩若應 諸 波羅蜜 (菩薩は、もし諸の波羅蜜に応じて) 教化眾生(衆生を教化すれば) 諸有所作(諸の、あらゆる作す所の) 舉足下足 (挙足下足は) 當知皆 從道場來(まさに知るべし道場より来たりて) 住於佛法矣(仏法に住することを) 說是法時(この法を説きし時) 五百天人(五百の天人は) 皆發 阿耨多羅三藐三菩提心(皆阿耨多羅三藐三菩提心を発しき) 故我不任(故に我は、彼れに詣りて) 詣彼問疾(疾を問うに任えず)

佛告 持世菩薩 (仏、持世菩薩に告げたまわく)

汝行詣維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り疾を問え)

持世 白佛言(持世、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任(我は、彼れに詣りて) 詣彼問疾(疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何んとなれば) 憶念我昔(憶念するに、我は、昔) 住於靜室(静室に住せり)

(時に) 魔波旬 從萬二千天女(魔波旬、万二千の天女を従え) 狀如 帝釋 (状(かたち)、帝釈の如く) 鼓樂絃歌 (鼓楽絃歌しながら) 來詣我所(我が所に来詣し) 與其眷屬(その眷属とともに) 稽首我足(我が足を稽首(けいしゅ、礼拝)し) 合掌恭敬(合掌恭敬(くぎょう)して) 於一面立(一面に於いて立てり) 我意謂是帝釋(我、意(こころ)に、これ帝釈なりと謂(おも)いて) 而語之言(これに語りて言わく) 善來憍尸迦(善く来たれり、憍尸迦(きょうしか、帝釈の姓)) 福應(福応ありといえども) 不當自恣(まさに自ら恣(ほしいまま)にすべからず) 當觀 五欲 無常(まさに五欲の無常なることを観じて) 以求 善本 (以って善本を求め) 於身命財(身命財に於いて) 而修 堅法 (堅法を修行すべし)

即語我言(すなわち、我に語りて言わく) 正士 (正士) 受是 萬二千天女(この万二千の天女を受けよ) 可備 掃灑 (掃灑に備うべし。)

我言(我言わく) 憍尸迦(憍尸迦) 無以此非法之物(この非法の物を以って) 要我 沙門 釋子 (我が沙門釈子に要(もと)むることなかれ) 此非我宜(これ我の宜しきに非ず)

所言(言う所) 未訖時維摩詰(未だ訖(おわ)らざる時)

來謂我言(維摩詰来たりて、我に謂って言わく) 非帝釋也(帝釈には非ざるなり) 是為魔來(これ魔が来たりて) 嬈固 汝耳(汝を嬈固すと為すのみ) 即語魔言((維摩詰)すなわち魔に語りて言わく)

是諸女等 可以與我(この諸女等、以って我に与うべし) 如我應受(我が如き、まさに受くべし)

魔即驚懼念(魔、すなわち驚懼して念(おも)えらく) 維摩詰 將無惱我(維摩詰は、はた我を悩ますことなからんや)

欲隱形去 而不能隱(形を隠して去らんと欲すれども、隠すこと能わず)

盡其神力 亦不得去(その神力を尽くせども、また去るを得ず)

即聞 空中聲曰(すなわち空中に声を聞く、曰く)

波旬(波旬) 以女與之(女を以って、これに与えれば) 乃可得去(すなわち去ることを得べし) 魔以畏故(魔、畏れを以っての故に)

俛仰 而與(俛仰して、与えぬ)

爾時(その時) 維摩詰 語諸女言(維摩詰、諸女に語りて言わく)

魔以汝等與我(魔は、汝等を以って、我に与う) 今汝皆當(今、汝らは、皆まさに) 發阿耨多羅三藐三菩提心(阿耨多羅三藐三菩提心を発すべし)

即隨所應(すなわち、応ずる所に随いて) 而為說法(為に法を説き) 令發道意(道意を発さしむ)

復言(また言わく) 汝等 已發道意(汝等は、すでに道意を発せり) 有法樂 可以自娛(法楽あり、以って自ら娯(たの)しむべし)

不應復樂 五欲 樂也(まさに、また五欲の楽しみを楽むべからず)

天女即問(天女、すなわち問う) 何謂法樂(何をか法楽と謂う)

答言(答えて言わく) 樂常信佛(常に仏を信ずることを楽しみ)

樂欲聽法(法を聞かんと欲することを楽しみ)

樂供養眾(衆を供養することを楽しみ)

樂離五欲(五欲を離るることを楽しみ)

樂觀 五陰 如怨賊(五陰は怨賊(おんぞく)の如しと観ずることを楽しみ)

樂觀 四大 如毒蛇(四大は毒蛇の如しと観ずることを楽しみ)

樂觀 內入空聚 (内入は、空聚の如しを観ずることを楽しみ)

樂隨護道意(道意に随って護ることを楽しみ)

饒益 眾生衆生を饒益することを楽しみ

樂敬養師(師を敬い養うことを楽しみ)

樂廣行施広く布施を行ずることを楽しみ

樂堅持戒(戒を堅持することを楽しみ)

樂忍辱柔和(忍辱柔和なることを楽しみ)

樂勤集善根(勤めて善根を集むることを楽しみ)

樂禪定不亂(禅定の乱れざることを楽しみ)

樂離垢 明慧 (離垢(りく、煩悩を離る)の明慧を楽しみ)

樂廣菩提心(菩提心を広むることを楽しみ)

樂降伏眾魔(衆魔を降伏することを楽しみ)

樂斷諸煩惱(諸の煩悩を断ずることを楽しみ)

樂淨佛國土(仏国土を浄むることを楽しみ)

樂成就 相好 故 修諸功德(相好を成就せんが故に、諸功徳を修むることを楽しみ)

樂嚴道場(道場を厳(かざ)ることを楽しみ)

樂聞深法不畏(深法を聞きて畏れざることを楽しみ)

三脫門 (三脱門を楽しみ)

不樂 非時 (非時を楽しまず) 樂近同學(同学に近づくことを楽しみ)

樂於非同學中(同学ならざる中に於いて) 心無 恚礙 (心に罣礙なきことを楽しみ)

將護 惡知識 (悪知識を将護することを楽しみ)

樂親近 善知識 (善知識に親近することを楽しみ) 樂心喜清淨(心に清浄を喜ぶことを楽しみ)

樂修 無量 道品 之法(無量の道品の法を修むることを楽しむ)

是為 菩薩法樂(これ菩薩の法楽と為す)

於是波旬(ここに於いて、波旬) 告諸女言(諸女に告げて言わく) 我欲與汝 俱還天宮(我は、汝と倶に、天宮に還らんと欲す)

諸女言(諸女言わく) 以我等 與此居士(我等を以って、この居士に与えぬ) 有法樂 我等甚樂(法楽あり、我等、甚だ楽しく) 不復樂五欲樂也(また五欲の楽しみを楽しまざるなり)

魔言(魔言わく) 居士可捨此女(居士、この女を捨つべし) 一切所有(一切の所有を) 施於彼者(彼れに施す者) 是為菩薩(これを菩薩と為す)

維摩詰言(維摩詰言わく) 我已捨矣(我は、すでに捨てぬ)

汝便將去(汝は、すなわち将(ひき)いて去れ)

令一切眾生(一切の衆生をして) 得法願具足(法と願い具足することを得しめん)

於是諸女(ここに於いて) 問維摩詰(諸女は、維摩詰に問わく)

我等云何(我等は、云何が) 止於魔宮 (魔宮に於いて止まらん)

維摩詰言(維摩詰言わく) 諸姊 有法門(諸姉、法門あり) 名無盡燈(無尽灯と名づく) 汝等當學(汝等は、まさに学ぶべし) 無盡燈者(無尽灯とは) 譬如一燈 燃百千燈(譬えば、一灯もて百千灯を燃やせば) 冥者皆明(冥(くら)き者は皆明らかにして) 明終不盡(明(光明)はついに尽きざるが如し)

如是諸姊(かくの如く、諸姉) 夫一菩薩(それ、一の菩薩) 開導百千眾生(百千の衆生を開導して) 令發 阿耨多羅三藐三菩提心(阿耨多羅三藐三菩提心を発さしむれば) 於其道

(その道(過程)に於いて意も)
亦不滅盡(また滅尽せず) 隨所說法(所説の法に随って) 而自增益 一切善法(自ら一切の善法を増益す) 是名 無盡燈也(これを無尽灯と名づくるなり)

汝等雖住魔宮(汝等は、魔宮に住むといえども) 以是無盡燈(この無尽灯を以って) 令無數天子天女(無数の天子、天女をして) 發阿耨多羅三藐三菩提心者(阿耨多羅三藐三菩提心を発さしめば) 為報佛恩(仏恩に報じ) 亦大饒益一切眾生(また一切の衆生に大饒益すと為す)

爾時天女(その時、天女は) 頭面禮 維摩詰足(維摩詰が足を、頭面(づめん)に礼して) 隨魔還宮(魔に随うて、宮に還り) 忽然不現(忽然(こつねん)現れざりき)

世尊(世尊) 維摩詰有如是(維摩詰は、かくの如きの) 自在神力(自在の神力と) 智慧辯才(智慧と辯才あり) 故我不任 詣彼問疾(故に我は、彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

佛告 長者子善德 (仏、長者子善徳に告げたまわく)

汝行詣 維摩詰 問疾(汝、行きて維摩詰に詣り、疾を問え)

善德白佛言(善徳、仏に白して言さく)

世尊(世尊) 我不堪任 詣彼問疾(我は、彼れに詣りて、疾を問うに堪任せず)

所以者何(所以は何んとなれば) 憶念我昔(憶念するに、我、昔) 自於父舍(自ら父の舎(いえ)に於いて) 設大施會(大施会(だいせえ)を設けて) 供養一切沙門(一切の沙門) 婆羅門(婆羅門) 及諸外道(および諸の外道) 貧窮下賤(貧窮、下賤) 孤獨乞人(孤独、乞人を供養し) 期滿七日(期(ご、期間)は七日に満つ)

時維摩詰來入會中(時に、維摩詰来たりて、会(え)中に入り) 謂我言(我に謂って言わく)

長者子(長者子) 夫大施會(それ、施会は) 不當如汝所設(まさに汝が設くる所の如くなるべからず)

當為法施之會(まさに法施の会を為すべし)

何用是財施會為(何んすれぞ、この財施の会を用いる)

我言(我言わく)

居士(居士) 何謂 法施之會(何をか法施の会と謂う)

答曰(答えて曰く) 法施會者(法施の会とは) 無前無後(前なく後なく) 一時供養 一切眾生(一時に一切の衆生を供養する)

是名法施之會(これ法施の会と名づく) 曰何謂也(曰く、何の謂いぞや)

謂以 菩提 起於慈心(謂わく、菩提を以(おも)いて、慈心を起こし)

以救眾生(衆生を救うことを以(おも)いて) 起大悲心(大悲心を起こし)

以持正法(正法を持することを以いて) 起於喜心(喜心を起こし)

以攝智慧(智慧を摂することを以いて) 行於捨心(捨心を行じ)

以攝慳貪(慳貪(の者)を摂することを以いて) 起檀波羅蜜(檀(だん、布施)波羅蜜を起こし)

以化犯戒(戒を犯す(者)を化することを以いて) 尸羅 波羅蜜(尸羅波羅蜜を起こし)

以無我法(無我法を以いて) 羼提 波羅蜜(羼提波羅蜜を起こし)

以離身心相(身心の相を離るることを以いて) 毘梨耶 波羅蜜(毘利耶波羅蜜を起こし)

以菩提相(菩提の相を以いて) 起禪波羅蜜(禅(禅定)波羅蜜を起こし)

以一切智(一切智を以いて) 起般若波羅蜜(般若波羅蜜を起こし)

教化眾生(衆生を教化すれども) 而起於空(空を起こし(空に背かず))

不捨 有為法 (有為法を捨てずして) 而起 無相 (無相を起こし(空を観ず))

示現受生(生を受くることを示現すれども) 而起 無作 (無作を起こし(空を観ず))

護持正法(正法を護持して) 起方便力(方便力を起こし)

以度眾生(衆生を度せんことを以いて) 四攝法 (四摂法を起こし)

以敬事一切(一切に敬い事(つか)うることを以いて) 起除慢法(慢法を除くことを起こし)

於身命財(身命財に於いて) 起三堅法(三堅の法を起こし)

六念(六念の中に於いて) 起思念法((正しき)思念の法を起こし)

六和敬 (六和敬に於いて) 起質直心(質直の心を起こし)

正行善法(正しく善法を行い) 起於淨命(浄命(じょうみょう、浄き生活)を起こし)

心淨歡喜(心、浄く歓喜して) 起近賢聖(賢聖に近づくことを起こし)

不憎惡人(悪人を憎まずして) 起調伏心(調伏の心を起こし)

以出家法((真の)出家の法を以いて) 起於深心(深心を起こし)

以如說行(説(仏説)の如く行ぜんことを以いて) 起於多聞(多聞を起こし)

以無諍法(無諍の法を以いて) 空閑處 (空閑処を起こし)

趣向佛慧(仏の慧に趣向せんとて) 起於 宴坐 (宴坐を起こし)

解眾生 (衆生の縛を解かんとて) 起修行地(修行地を起こし)

以具相好(相好を具し) 及淨佛土(および仏土を浄めんことを以いて) 起福德業(福徳の業を起こし)

知一切眾生心念(一切の衆生の心念を知り) 如應說法(応ずるが如くに法を説かんとて) 起於智業(智業を起こし)

知一切法 不取不捨(一切の法は、取らず捨てざるを知り) 入一相門(一相の門に入らんとて) 起於慧業(慧業を起こし)

斷一切煩惱(一切の煩悩) 一切障礙(一切の障礙) 一切不善法(一切の不善法を断ぜんとて) 起一切善業(一切の善業を起こし)

以得 一切智慧 一切善法(一切の智慧と一切の善法を得んことを以(おも)いて) 起於一切 助佛道法 (一切の助仏道の法を起こす)

如是善男子(かくの如く、善男子) 是為法施之會(これを法施の会と為す) 若菩薩住 是法施會者(もし菩薩、この法施の会に住すれば) 為大施主(大施主と為し) 亦為一切 世間 福田 (また一切世間の福田と為す)

世尊(世尊) 維摩詰 說是法時(維摩詰、この法を説きし時) 婆羅門眾中 二百人(婆羅門衆の中の二百人) 皆發阿耨多羅三藐三菩提心(皆 阿耨多羅三藐三菩提心を発せり)

我時(我は、時に) 心得清淨(心に清浄を得) 歎未曾有(未曽有を歎じ) 稽首禮 維摩詰足(稽首して維摩詰の足に礼して) 即解 瓔珞 價直 百千(すなわち瓔珞の価値(けじき)百千なるを解き) 以上之(以ってこれに上(たてま)つらんとすれども) (取ることを肯ぜず)

我言居士(我、居士に言わく)

願必納受(願わくは、必ず納受して) 隨意所與(与うる所を意のままにしたまえ)

維摩詰(維摩詰) 乃受瓔珞(すなわち瓔珞を受け) 分作二分(分けて二分と作し) 持一分施(一分を持して) 此會中一最下乞人(この会の中の、一(ひとり)最も下の乞人に施し) 持一分奉 彼難勝如來(一分をかの難勝如來に奉る)

一切眾會皆(一切の衆会は皆) 見光明國土 難勝如來(光明国土の難勝如来を見たてまつり) 又見珠瓔(また珠瓔の) 在彼佛上(彼の仏土上に在りて) 變成四柱寶臺(変じ四柱の宝台と成り) 四面 嚴飾 (四面を厳飾して) 不相 障蔽 (相い障蔽せざることを見る)

時維摩詰(時に、維摩詰) 現神變已(神変を現じおわりて) 作是言(この言を作さく)

若施主等心(もし施主等心に) 施一最下乞人(一の最下の乞人に施して) 猶如如來 福田之相(なお如来の福田の相の如きと) 無所分別(分別する所なく) 等于大悲(大悲に於いて等しく) 不求果報(果報を求めざらば) 是則名曰 具足法施(これをば、すなわち名づけて、法施を具足すと曰う)

城中一最下乞人(城中の一の最下の乞人) 見是神力(この神力を見) 聞其所說(その所説を聞いて) 皆發 阿耨多羅三藐三菩提心(皆阿耨多羅三藐三菩提心を発しき) 故我不任 詣彼問疾(故に我は、彼れに詣りて、疾を問うに任えず)

如是諸菩薩(かくの如く、諸の菩薩も) 各各向佛(各々、仏に向かいて) 說其本緣(その本縁(理由)を説き) 稱述維摩詰所言(維摩詰の言う所を称述して) 皆曰不任 詣彼問疾(皆、彼れに詣りて、疾を問うに任えずと曰いき)


(( 仏国品第一 )) (( 方便品第二 )) (( 弟子品第三 )) (( 菩薩品第四 )) (( 文殊師利問疾品第五 )) (( 不思議品第六 )) (( 観衆生品第七 )) (( 仏道品第八 )) (( 入不二法門品第九 )) (( 香積品仏品第十 )) (( 菩薩行品第十一 )) (( 見阿閦仏品第十二 )) (( 法供養品第十三 )) (( 嘱累品第十四 ))


Copyright ©2024 Matsumura DB Lab. All rights reserved.

お問い合わせメールは、こちらからお願いします。Please contact us !

あなたは 0000027801 人目のお客様です。

You connected as No. 0000027801 customer.