妙法蓮華経みょうほうれんげきょう 如来寿量品にょらい じゅりょうほん 第十六だいじゅうろく

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生死について

生命が顕在化した状態を「生」とし、潜在化した状態を「死」とし、 その生死が無限に持続しているのが、生命そのものなのです。 生を顕在化、死を潜在化とする仏法の究極の哲理は、悠久偉大な生命をみていて、 その生と死は不二であると説いているのです。 生を働かせているものは妙なる力であり、 潜在化した生命は、やがて縁に触れて顕在化し、生を営みます。 生は静かに退き、死へとおもむき、 その潜在化は新しいエネルギーを蓄えつつ、次の生を待つのです。 生は やがて死におもむき、潜在化した生命は、宇宙生命の力を得て、 生への飛翔を待つのです。


要約

仏は如来の言葉を信じて理解せよと述べ、 如来は阿耨多羅三藐三菩提(仏の悟り)を得てから無量無辺百千万億那由他を経ていて、 この娑婆世界で説法教化し、 他の百千万億那由他阿僧祇の国においても衆生を導いてきたのです。 衆生が私のところに来れば、仏眼でその信など機根の利鈍を観て、 種々の方便で微妙の法を説き、歓喜させたのです。 如来の経典は、衆生を救い出すためのものなのです。 如来は如実に三界の姿を知見し、生死に区別はないのを知っています。 智慧があり聡明で、薬の調合のすぐれ、様々な病を治す良医に、 多くの子息がいたとします。 良医が他の国に行っているときに、子供たちが、 毒薬を飲んでしまい苦しみ悶え、地を転げまわっています。 その時にその父が戻り、家に帰ってきます。毒を飲んだ子供たちは、 正気を失ってしまった者と、失っていない者がいました。父を見て、 皆大いに喜び、ひざまづいて拝み問います。「よく無事に帰ってこられました。 私たちは愚かで誤って毒薬を服してしまいました。お願いですから治療をして頂き たいのです」 子供たちが苦悩をすることを見た父は、さまざまな処方によって好きな薬草の色、香、味が 具わったものを求めて調合し、子に与えて飲ませようと、このように言います。 「この大良薬は色、香、味もことごとく具わったている。あなたたちはこれを飲みなさい。 すぐに苦悩が除かれ、すべての病はなくなるだろうから」 これらの子供たちの中で正気を失わずにいた者は、 これを飲み、病はことごとく除かれますが、その他の正気を失ってしまっている者は 父が来たのを見て喜び、ひさまづいて病を治してほしいと求めるのですが、 その薬を飲もうとしません。なぜなら、毒気が深く入って本心を失ってしまっているために、 この好ましい色と香ある薬を良いものではないと思えたからなのです。 父はこのように思います。「このかわいそうな子供たちよ、毒が入り、 心が顛倒してしまっている。私を見て喜んで治療を求めているが、 このような良い薬を与えても飲もうとしない。今こそ方便でこの薬を飲ませよう」 そして、このように言います。 「おまえたちよ、よく聞くのですよ。私は老衰し死ぬ時がやってきているのです。 この良薬を置いておくから飲みなさい」 このように教え終えてから他国に行き、使いを遣わし告げます。 「あななたちのお父さんは死んでしまった」。 この時、子供たちは父が亡くなったと聞き、心は大いに憂悩し、このように思います。 「もし、父がいたらば私たちを慈しみ憐れみ、救い護ってくださるでしょう。 今、私を捨て遠く他国で亡くなってしまった。そういえばもう孤児となってしまい頼れるものもいない」 常に悲しみの感情を懐くうち、心はついに覚めて悟り、この薬の色、香、味がよいことを知り、 これを服用すると毒による病がすべて癒えたのです。父は子がことごとく癒されたと聞き、 戻って彼らの前に再び現れたのでした。 「諸の善男子よ、これをどう思うだろうか。この良医の虚妄の罪をあげることができるだろうか」 「わたしも成仏して以来、 無量無辺百千万億那由他阿僧祇劫が経っているのですが、 衆生のために方便力で『まさに滅度するだろう』と言うのです。

その時世尊は、重ねてこの意味を宣べようと、偈を説いてこのように言います。
私が仏を得て以来、これまで経過した多くの劫の数は無量百千万億載阿僧祗になる。 常に法を説いて無数億の衆生を教化し、仏道に入らせてきた。 このようにして数限りない劫を経てきているのだ。 衆生を救おうとする故に、方便で捏槃の姿を現しますが、実は入滅してはいないのだ。 常にここに住して法を説いているのだ。 私は常にここにあるけれども、諸の神通力により顛倒した衆生には見えなくしているのだ。 衆生が私の滅度を見て、いたるところに遺骨を供養し、皆が恋慕を懐いて渇仰する心を生じさせ、 衆生は既に信伏し質直で心が柔軟になると、一心に仏を見ようと自らの命も惜しまないようになる。 その時に私と僧たちは共に霊鷲山に現れるのだ。そして衆生にこのように語る。 「私は常に存在しており、滅することはないのだ」 方便の力で滅、不滅があるように現わしているのだ。他国の衆生で恭敬し信じ喜ぶ者があるのならば、 私はその中においても無上の法を説くのだ。あなた方はこれを聞かずに、ただ私が滅度したと思うのだ。 私には多くの衆生が苦しみの海に溺れているのが見える。ゆえに姿を現さないことで、 仏を渇仰する心を生じさせ、 その心が恋い慕うようになったところで、私は姿を現し法を説くのだ。 神通力とはこのようなものなので、阿僧祇劫において、 常に霊鷲山や他のさまざまな場所に住しているのだ。 衆生が「劫が尽き大火に焼かれる」と思う時も、 宝の樹には花や果実が多くあり、衆生が遊楽できる所なのだ。 諸天が天鼓を打ち、常に多くの妓楽を奏で、 曼陀羅華を雨のように降らせて、仏や大衆に散らしているのだ。 私の浄土は壊れることはないけれども、衆生は「焼け尽くされ、 不安や恐れなど多くの苦悩が、いたるところに充満している」と見るのだ。 この様々な罪がある衆生は、悪業の因縁により、 阿僧祇劫を過ぎても、三宝の名を聞くことがないのだ。 多くの功徳があるものを修め、柔和で質直な者は 皆、わが身がここにあって法を説いているのを見るのだ。 ある時はこの衆生のために仏の寿命は無量であると説き、 長い時を経て、ようやく仏を見ることができた者には、仏に会うことは難しいと説くのだ。 私の智慧の力とはこのようなものなのだ。智慧の光は無量に照らし、 寿命は無数劫の長い間、業を修行して得られたものなのだ。 医者が善い方便で狂った子を治そうとするために、 実際は生きているのに死んだと言ったように、 私も世の父であり、苦しむものに自ら気ずきを得てもらうために、滅すると言ったのだ。 常に私を見ていると、奢り自分勝手な心を生じ、 勝手気ままに五欲に執着し、悪道に堕ちてしまうのだ。 私は常に、衆生が無上道に入り仏心を成就できるように、 種々の法を説くのだ。


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爾時仏告(にじぶつごう) 諸菩薩及(しょぼさつぎゅう) 一切大衆(いっさいだいしゅ) 諸善男子(しょぜんなんし) 汝等当信解(にょとうとうしんげ) 如来誠諦之語(にょらいじょうたいしご) 復告大衆(ぶごうだいしゅ) 汝等当信解(にょとうとうしんげ) 如来誠諦之語(にょらいじょうたいしご) 又復告諸大衆(うぶごうじょだいしゅ) 汝等当信解(にょうとうとうしんげ) 如来誠諦之語にょらいじょうたいしご) 是時菩薩大衆(ぜじぼさつだいしゅ) 弥勒為首(みろくいしゅ) 合掌白仏言(がっしょうびゃくぶつごん) 世尊(せそん) 唯願説之(ゆいがんせつし) 我等当信受仏語(がとうとうしんじゅぶつご) 如是三白已(にょぜさんびゃくい) 復言(ぶごん) 唯願説之(ゆいがんせつし) 我等当信受仏語(がとうとうしんじゅぶつご) 爾時世尊(にじせそん) 知諸菩薩(ちしょぼさつ) 三請不止(さんしょうふし) 而告之言(にごうしごん) 汝等諦聴(にょとうたいちょう) 如来秘密(にょらいひみつ) 神通之力(じんずうしりき) 一切世間(いっさいせけん) 天人及阿脩羅(てんにんぎゅうあしゅら) 皆謂今釈迦牟尼仏(かいいこんしゃかむにぶつ) 出釈氏宮(しゅつしゃくしぐう) 去伽耶城不遠(こがやじょうふおん) 坐於道場(ざおどうじょう) 得阿耨多羅(とくあのくたら) 三藐三菩提(さんみゃくさんぼだい) 然善男子(ねんぜんなんし) 我実成仏已来(がじつじょうぶついらい) 無量無辺(むりょうむへん) 百千万億(ひゃくせんまんのく) 那由佗劫(なゆたこう) 譬如五百千万億(ひにょごひゃくせんまんのく) 那由佗(なゆた) 阿僧祇(あそぎ) 三千大千世界(さんぜんだいせんせかい) 仮使有人(けしうにん) 抹為微塵(まつちみじん) 過於東方(かおとうぼう) 五百千万億(ごひゃくせんまんのく) 那由佗(なゆた) 阿僧祇国(あそうぎこく) 乃下一塵(ないげいちじん) 如是東行(にょぜとうぎょう) 尽是微塵(じんぜみじん) 諸善男子(しょぜんなんし) 於意云何(おいうんが) 是諸世界(ぜしょせかい) 可得思惟校計(かとくしゆいきょうけい) 知其数不(ちごしゅふ 弥勒菩薩等(みろくぼさつとう) 倶白仏言(ぐびゃくぶつごん) 世尊(せそん) 是諸世界(ぜしょせかい) 無量無辺(むりょうむへん) ) 非算数所知(ひさんじゅしょち) 亦非心力所及(やくひしんりきしょぎゅう) 一切声聞(いっさいしょうもん) 辟支仏(びゃくしぶつ) 以無漏智(いむろち) 不能思惟(ふのうしゆい) 知其限数(ちごげんしゅ) 我等住(がとうじゅ) 阿惟越致地(あゆいおつちじ) 於是事中(おぜじちゅう) 亦所不達(やくしょふだつ) 世尊(せそん) 如是諸世界(にょぜしょせかい) 無量無辺(むりょうむへん) 爾時仏告(にじぶつごう) 大菩薩衆(だいぼさつしゅ) 諸善男子(しょぜんなんし) 今当分明(こんとうふんみょう) 宣語汝等(せんごにょとう) 是諸世界(ぜしょせかい) 若著微塵(にゃくじゃくみじん) 及不著者(ぎゅうふじゃくしや) 尽以為塵(じんにいじん) 一塵一劫(いちじんいっこう) 我成仏已来(がじょうぶついらい) 復過於此(ぶかおし) 百千万億那由佗(ひゃくせんまんのくなゆた) 阿僧祇劫(あそうぎこう) 自従是来(じじゅうぜらい) 我常在此娑婆世界(がじょうざいししゃばせかい) 説法教化(せっぽうきょうけ) 亦於余処(やくおよしょ) 百千万億(ひゃくせんまんのく) 那由佗(なゆた) 阿僧祇国(あそうぎこく) 導利衆生(どうりじゅじょう) 諸善男子(しょぜんなんし) 於是中間(おぜちゅうげん) 我説然燈仏等(がせつねんどうぶっとう) 又復言其(うぶごんご) 入於涅槃(にゅうおねはん) 如是皆以(にょぜかいい) 方便分別(ほうべんぶんべつ) 諸善男子(しょぜんなんし) 若有衆生(にゃくうしゅじょう) 来至我所(らいしがしょ) 我以仏眼(かいぶつげん) 観其信等(かんごしんとう) 諸根利鈍(しょこんりどん) 随所応度(ずいしょおうど) 処処自説(しょしょじせつ) 名字不同(みょうじふどう) 年紀大小(ねんきだいしょう) 亦復現言(やくぶげんごん) 当入涅槃(とうにゅうねはん) 又以種種方便(ういしゅじゅほうべん) 説微妙法(せつみみょうほう) 能令衆生(のうりょうじゅじょう) 発歓喜心(はっかんぎしん) 諸善男子(しょぜんなんし) 如来見諸衆生(にょらいけんしょしゅじょう) 楽於小法(ぎょうおしょうぼう) 徳薄垢重者(とくはっくじゅうしゃ) 為是人説(いぜにんせつ) 我少出家(がしょうしゅっけ) 得阿耨多羅三藐三菩提(とくあのくたらさんみゃくさんぼだい) 然我実成仏已来(ねんがじつじょうぶついらい) 久遠若斯(くおんにゃくし) 但以方便(たんにほうべん) 教化衆生(きょうけじゅじょう) 令入仏道(りょうにゅうぶつどう) 作如是説(さにょぜせつ 諸善男子(しょぜんなんし) 如来所演経典(にょらいしょえんきょうでん) 皆為度脱衆生(かいいどだっしゅじょう) 或説己身(わくせつこしん) 或説他身(わくせつたしん) 或示己身(わくじこしん) 或示佗身(わくじたしん) 或示己事(わくじこじ) 或示佗事(わくじたじ) 諸所言説(しょしょごんせつ) 皆実不虚(かいじつふこ 所以者何(しょいしゃが) 如来如実知見(にょらいにょじつちけん) 三界之相(さんがいしそう) 無有生死(むうしょうじ) 若退若出(にゃくたいにゃくしゅつ) 亦無在世(やくむざいせ) 及滅度者(ぎゅうめつどしゃ) 非実非虚(ひじつひこ) 非如非異(ひにょひい) 不如三界(ふにょさんがい) 見於三界(けんのさんがい) 如斯之事(にょししじ) 如来明見(にょらいみょうけん) 無有錯謬(むうしゃくみょう) 以諸衆生(いしょしゅじょう) 有種種性(うしゅじゅしょう) 種種欲(しゅじゅよく) 種種行(しゅじゅぎょう) 種種憶想(しゅじゅおくそう) 分別故(ぶんべつこ) 欲令生諸善根(よくりょうしょしょぜんごん) 以若干因縁(いにやっかんいんねん) 譬諭言辞(ひゆごんじ) 種種説法(しゅじゅせっぽう) 所作仏事(しょさぶつじ) 未曾暫廃(みぞうざんぱい) 如是我成仏已来(にょぜがじょうぶついらい) 甚大久遠(じんだいくおん) 寿命無量(じゅみょうむりょう) 阿僧祇劫(あそうぎこう) 常住不滅(じょうじゅふめつ) 諸善男子(しょぜんなんし) 我本行菩薩道(がほんぎょうぼさつどう) 所成寿命(しょじょうじゅみょう) 今猶未尽(こんゆうみじん) 復倍上数(ぶばいじょうしゅ) 然今非実滅度(ねんこんひじつめつど) 而便唱言(にべんしょうごん) 当取滅度(とうしゅめつど) 如来以是方便(にょらいいぜほうべん) 教化衆生(きょうけしゅじょう) 所以者何(しょいしゃが) 若仏久住於世(にゃくぶつくじゅうおせ) 薄徳之人(はくとくしにん) 不種善根(ふしゅぜんごん) 貧窮下賎(びんぐげせん) 貪著五欲(とんじゃくごよく) 入於憶想(にゅうおおくそう) 妄見網中(もうけんもうちゅう) 若見如来(にゃっけんにょらい) 常在不滅(じょうざいふめつ) 便起(べんき) 憍恣(きょうし) 而懐厭怠(にええんだい) 不能生於(ふのうしょうお) 難遭之想(なんぞうしそう) 恭敬之心(くぎょうししん) 

是故如来(ぜこにょらい) 以方便説(いほうべんせつ) 比丘当知(びくとうち) 諸仏出世(しょぶつしゅっせ) 難可値遇(なんかちぐ) 所以者何(しょいしゃが) 諸薄徳人(しょはくとくにん) 過無量百千万億劫(かむりょうひゃくせんまんのっこう) 或有見仏(わくうけんぶつ) 或不見者(わくふけんしゃ) 以此事故(いしじこ) 我作是言(がさぜごん) 諸比丘(しょびく) 如来難可得見(にょらいなんかとっけん) 斯衆生等(ししゅじょうとう) 聞如是語(もんにょぜご) 必当生於難遭之想(ひっとうしょうおなんぞうしそう) 心懐恋慕(しんねれんぼ) 渇仰於仏(かつごうおぶつ) 便種善根(べんしゅぜんごん) 是故如来(ぜこにょらい) 雖不実滅(すいふじつめつ) 而言滅度(にごんめつど) 又善男子(うぜんなんし) 諸仏如来(しょぶつにょらい) 法皆如是(ほうかいにょぜ) 為度衆生(いどしゅじょう) 皆実不虚(かいじつふこ)
譬如良医(ひにょろうい) 智慧聡達(ちえそうだつ) 明練方薬(みょうれんほうやく) 善治衆病(ぜんじしゅびょう) 其人多諸子息(ごにんたしょしそく) 若十(にゃくじゅう) 二十(にじゅう) 乃至百数(ないしひゃくしゅ) 以有事縁(いうじえん) 遠至余国(おんしよこく) 諸子於後(しょしおご) 飲佗毒薬(おんたどくやく) 薬発悶乱(やくほつもんらん) 宛転于地(えんでんうじ)
是時其父(ぜじごぶ) 還来帰家(げんらいきけ) 諸子飲毒(しょしおんどく) 或失本心(わくしつほんしん) 或不失者(わくふしつしゃ) 遥見其父(ようけんごぶ) 皆大歓喜(かいだいかんぎ) 拜跪問訊(はいきもんじん) 善安穏帰(ぜんなんのんき) 我等愚癡(がとうぐち) 誤服毒薬(ごぶくどくやく) 願見救療(がんけんくりょう) 更賜寿命(きょうしじゅみょう)
父見子等(ぶけんしとう) 苦悩如是(くのうにょぜ) 依諸経方(えしょきょうぼう) 求好薬草(ぐこうやくそう) 色香美味(しきこうみみ) 皆悉具足(かいしつぐそく) 擣篩和合(とうしわごう) 与子令服(よしりょうぶく) 而作是言(にさぜごん) 此大良薬(しだいろうやく) 色香美味(しきこうみみ) 皆悉具足(かいしつぐそく) 汝等可服(にょとうかぶく) 速除苦悩(そくじょくのう) 無復衆患(むぶじゅげん)

其諸子中(ごしょしちゅう) 不失心者(ふしつしんじゃ) 見此良薬(けんしろうやく) 色香倶好(しきこうぐこう) 即便服之(そくべんぶくし) 病尽除愈(びょうじんじょゆ) 余失心者(よしつしんじゃ) 見其父来(けんごぶらい) 雖亦歓喜問訊(すいやっかんぎもんじん) 求索治病(ぐしゃくじびょう) 然与其薬(ねんよごやく) 而不肯服(にふこうぶく) 所以者何(しょいしゃが) 毒気深入(どっけじんにゅう) 失本心故(しっぽんしんこ) 於此好色香薬(おしこうしきこうやく) 而謂不美(にいふみ)

父作是念(ぶさぜねん) 此子可愍(ししかみん) 為毒所中(いどくしょちゅう) 心皆顛倒(しんかいてんどう) 雖見我喜(すいけんがき) 求索救療(ぐしゃつくりょう) 如是好薬(にょぜこうやく) 而不肯服(にふこうぐく) 我今当設方便(がこんとうせつほうべん) 令服此薬(りょうぶくしやく) 即作是言(そくさぜごん) 汝等当知(にょとうとうち) 我今衰老(がこんすいろう) 死時已至(じしいし) 是好良薬(ぜこうろうやく) 今留在此(こんるざいし) 汝可取服(にょかしゅぶく) 勿憂不差(もっつうふさい) 作是教已(さぜきょうい) 復至佗国(ふしたこく) 遣使還告(けんしげんごう) 汝父已死(にょぶいし)

是時諸子(ぜじしょし) 聞父背喪(もんぶはいそう) 心大憂悩(しんだいうのう) 而作是念(にさぜねん) 若父在者(にゃくぶざいしゃ) 慈愍我等(じみんがとう) 能見救護(のうけんくご) 今者捨我(こんじゃしゃが) 遠喪佗国(おんそうたこく) 自惟孤露(じゆいころ) 無復恃怙(むぶじこ)

常懐悲感(じょうえひかん) 心遂醒悟(しんずいしょうご) 乃知此薬(ないちしやく) 色香味美(しきこうみみ) 即取服之(そくしゅぶくし) 毒病皆愈(どくびょうかいゆ) 其父聞子(ごぶもんし) 悉已得差(しっしとくさい) 尋便来帰(じんべんらいき) 咸使見之(げんしけんし)
諸善男子(しょぜんなんし) 於意云何(おいうんが) 頗有人能(はうにんのう) 説此良医(せっしろうい) 虚妄罪不(こもうざいふ) 不也世尊(ほっちゃせそん)

仏言(ぶつごん) 我亦如是(がやくにょぜ) 成仏已来(じょうぶついらい) 無量無辺(むりょうむへん) 百千万億(ひゃくせんまんのく) 那由佗阿僧祇劫(なゆたあそぎこう) 為衆生故(いしゅじょうこ) 以方便力(いほうべんりき) 言当滅度(ごんとうめつど) 亦無有能(やくむうのう) 如法説我(にょほうせつが) 虚妄過者(こもうかしゃ) 爾時世尊(にじせそん) 欲重宣此義(よくじゅうせんしぎ) 而説偈言(にせつげごん)


自我得仏来(じがとくぶつらい) 所経諸劫数(しょきょうしょこつしゅ) 無量百千万(むりょうひゃくせんまん) 億載阿僧祇(おくさいあそうぎ)
常説法教化(じょうせっぽうきょうけ) 無数億衆生(むしゅおくしゅじょう) 令入於仏道(りょうにゅうおぶつどう) 爾来無量劫(にらいむりょうこう)
為度衆生故(いどじゅじょうこ) 方便現涅槃(ほうべんげんねはん) 而実不滅度(にじつふめつど) 常住此説法(じょうじゅうしせっぽう)
我常住於此(がじょうじゅうおし) 以諸神通力(いしょじんずうりき) 令顛倒衆生(りょうてんどうじゅじょう) 雖近而不見(すいごんにふけん)
衆見我滅度(しゅけんがめつど) 広供養舎利(こうくようしゃり) 咸皆懐恋慕(げんかいえれんぼ) 而生渇仰心(にしょうかつごうしん
衆生既信伏(しゅじょうきしんぶく) 質直意柔軟(しちじきいにゅうなん) 一心欲見仏(いっしんよっけんぶつ) 不自惜身命(ふじしゃくしんみょう)
時我及衆僧(じがきゅうしゅそう) 倶出霊鷲山(くしゅつりょうじゅせん) 我時語衆生(がじごしゅじょう) 常在此不滅(じょうざいしふめつ

以方便力故(いほうべんりきこ) 現有滅不滅(げんうめつふめつ) 余国有衆生(よこくうしゅじょう) 恭敬信楽者(くぎょうしんぎょうしゃ)
我復於彼中(がぶおひちゅう) 為説無上法(いせつむじょうほう) 汝等不聞此(にょとうふもんし) 但謂我滅度(たんにがめつど)
我見諸衆生(がけんしょしゅじょう) 没在於苦海(もつざうおくかい) 故不為現身(こふいげんしん) 令其生渇仰(りょうごしょうかつごう)

因其心恋慕(いんごしんれんぼ) 乃出為説法(ないしゅついせっぽう) 神通力如是(じんずうりきにょぜ) 於阿僧祇劫(おあそうぎこう)
常在霊鷲山(じょうざいりょうじゅせん) 及余諸住処(ぎゅうよしょじゅうしょ) 衆生見劫尽(しゅじょうけんこうじん) 大火所焼時(たいかしょしょうじ)
我此土安穏(がしどあんのん) 天人常充満(てんにんじょうじゅうまん) 園林諸堂閣(おんりんしょどうかく) 種種宝荘厳(しゅじゅほうしょうごん)
宝樹多花果(ほうじゅたけか) 衆生所遊楽(しゅじょうしょゆうらく) 諸天撃天鼓(しょてんぎゃくてんく) 常作衆伎楽(じょうさつしゅぎがく)
雨曼陀羅華(うまんだらけ) 散仏及大衆(さんぶつぎゅうだいしゅ) 我浄土不毀(がじょうどふき) 而衆見焼尽(にしゅけんしょうじん)
憂怖諸苦悩(うふしょくのう) 如是悉充満(にょぜしつじゅうまん) 是諸罪衆生(ぜしょざいしゅじょう) 以悪業因縁(いあくごういんねん)

過阿僧祇劫(かあそうぎこう) 不聞三宝名(ふもんさんぼうみょう) 諸有修功徳(しょうしゅくどく) 柔和質直者(にゅうわしちじきしゃ)
則皆見我身(そつかいけんがしん) 在此而説法(ざいしにせっぽう) 或時為此衆(わくじいししゅ) 説仏寿無量(せつぶつじゅむりょ
久乃見仏者(くないけんぶっしゃ) 為説仏難値(いせつぶつなんち) 我智力如是(がちりきにょぜ) 慧光照無量(えこうしょうむりょう)
 寿命無数劫(じゅみょうむしゅこう) 久修業所得(くしゅごうしょとく) 汝等有智者(にょとううちしゃ) 勿於此生疑(もっとししょうぎ)
当断令永尽(とうだんりょうようじん) 仏語実不虚(ふつごじっぷうこ) 如医善方便(にょいぜんほうべん) 為治狂子故(いじおうしこ)
実在而言死(じつざいにごんし) 無能説虚妄(むのうせっこもう) 我亦為世父(がやくいせぶ) 救諸苦患者(くしょくげんじゃ)
為凡夫顛倒(いぼんぶてんどう) 実在而言滅(じつざいにごんめつ) 以常見我故(いじょうけんがこ) 而生驕恣心(にしょうきょうししん)
放逸著五欲(ほういつじゃくごよく) 墮於悪道中(だおあくどうちゅう) 我常知衆生(がじょうちしゅじょう) 行道不行道(ぎょうどうふぎょうどう)
随応所可度(ずいおうしょかど) 為説種種法(いせつしゅじゅほう) 毎自作是念(まいじさぜねん) 以何令衆生(いがりょうしゅじょう)
得入無上道(とくにゅうむじょうどう) 速成就仏身(そくじょうじゅぶっしん)

妙法蓮華経如来寿量品第十六

爾時仏告諸菩薩及一切大衆諸善男子(爾の時に仏、諸の菩薩、及び一切の大衆、諸の善男子、に告げたまわく)
汝等当信解如来 誠諦之語 (汝等当に如来の誠諦(じょうたい)の語を信解(しんげ)すべし) 復告大衆 汝等当信解如来誠諦之語(復大衆につげたまわく汝等当に、如来の誠諦の語を信解すべし) 又復告諸大衆 汝等当信解如来誠諦之語(又復、諸の大衆に告げたまわく、 汝等当に、如来の誠諦の語を信解すべし) 是時菩薩大衆弥勒為首合掌白仏言(是の時に菩薩大衆、弥勒を首(はじめ)と為して、合掌して仏に白して言さく)

世尊唯願説之我等当信受仏語(世尊、唯願わくは之を説きたまえ我等当に、仏の語を信受したてまつるべし) 如是三白已復言(是の如く三たび白(もう)し已って、復言さく)
唯願説之我等当信受仏語(唯願わくは之を説きたまえ我等当に、仏の語を信受したてまつるべしと)
爾時世尊知諸菩薩三請不止而告之言(爾の時に世尊、諸の菩薩の、三たび請じて止まざることを知しめして、之に告げて言わく)
汝等諦聴如来祕密神通之力(汝等諦(あきら)かに聴け、如来の秘密神通の力を) 一切世間(一切世間の) 天人及阿修羅(天人及び阿修羅は) 皆謂今釈迦牟尼仏出釈氏宮(皆今の釈迦牟尼仏、釈氏の宮を出でて) 去伽耶城不遠(伽耶城(がやじょう)を去ること遠からず)
坐於道場得 阿耨多羅三藐三菩提 (道場に坐して、 阿耨多羅三藐三菩提三菩提を得たまえりと謂(おも)えり)
然善男子(然るに善男子) 我実成仏已来(我実に成仏してより已来) 無量無辺百千万億(無量無辺百千万億) 那由他劫(那由佗劫(なゆたこう)なり) 譬如五百千万億(譬えば、五百千万億)

那由他阿僧祇三千大千世界(那由佗阿僧祇の三千大千世界を) 假使有人末為微塵(仮使(たとい)人有って、抹して微塵(みじん)と為して) 過於東方五百千万億(東方五百千万億) 那由他阿僧祇国(那由佗阿僧祇の国を過ぎて) 乃下一塵(乃ち一塵を下し) 如是東行(是の如く東に行きて) 尽是微塵(是の微塵を尽さんが如き)
諸善男子(諸の善男子) 於意云何(意に於いて云何(いかん)) 是諸世界(是の諸の世界は) 可得思惟校計知其数不(思惟し校計して、其の数を知ることを得べしや不や)
弥勒菩薩等倶白仏言(弥勒菩薩等、倶に仏に白して言さく)

世尊(世尊) 是諸世界(是の諸の世界は) 無量無辺(無量無辺にして) 非算数所知(算数の知る所に非ず) 亦非心力所及(亦心力の及ぶ所に非ず)
一切聲聞 辟支仏 (一切の声聞、辟支仏) 以無漏智(無漏智を以っても) 不能思惟知其限数(思惟して其の限数を知ること能わじ)
我等住 阿惟越致地 (我等阿惟越致地に住すれども) 於是事中亦所不達(是の事の中に於いては、亦達せざる所なり)
世尊(世尊) 如是諸世界(是の如き諸の世界) 無量無辺(無量無辺なり)

爾時仏告(爾の時に仏) 大菩薩衆(大菩薩衆に告げたまわく)
諸善男子(諸の善男子) 今当分明宣語汝等(今当に分明(ふんみょう)に、汝等に宣語すべし) 是諸世界(是の諸の世界の) 若著微塵(若しは微塵を著(お)き) 及不著者(及び著かざる者を) 尽以為塵一塵一劫(尽く以って塵と為して、一塵を一劫とせん)
我成仏已来(我成仏してより已来) 復過於此(復此に過ぎたること) 百千万億(百千万億) 那由他阿僧祇劫(那由佗阿僧祇劫なり)
自從是来(是れより来) 我常在此(我常に此の) 娑婆世界(娑婆世界に在って) 説法教化(説法教化す)
亦於余処(亦、余処の) 百千万億(百千万億) 那由他阿僧祇国導利衆生(那由佗阿僧祇の国に於いても、衆生を導利す)
諸善男子(諸の善男子) 於是中間(是の中間に於いて) 我説燃燈仏等(我然燈仏等と説き) 又復言其入於涅槃(又復、其涅槃に入ると言いき)
如是皆以(是の如きは皆) 方便分別(方便を以って分別せしなり)
諸善男子(諸の善男子) 若有衆生(若し衆生有って) 来至我所(我が所に来至するには) 我以仏眼(我仏眼を以って) 觀其信等(其の信等の) 諸根利鈍(諸根の利鈍を観じて) 随所応度(応に度すべき所に随って) 処処自説 名字不同年紀大小(処処に自ら名字の不同、年紀の大小を説き) 亦復現言当入涅槃(亦復、現じて当に涅槃に入るべしと言い) 又以種種方便説微妙法(又、種種の方便を以って、微妙(みみょう)の法を説いて) 能令衆生(能く衆生をして) 発歓喜心(歓喜の心を発せしめき)

諸善男子(諸の善男子) 如来(如来) 見諸衆生(諸の衆生の) 楽於小法(小法を楽える) 徳薄垢重者(徳薄垢重(とくはくくじゅう)の者を見ては) 為是人説(是の人の為に) 我少出家(我少(わか)くして出家し) 得阿耨多羅三藐三菩提(阿耨多羅三藐三菩提を得たりと説く) 然我実成仏已来久遠若斯(然るに我、実に成仏してより已来(このかた)、久遠なること斯(かく)の若し)
但以方便(但方便を以って) 教化衆生(衆生を教化して) 令入仏道(仏道に入らしめんとして) 作如是説(是の如き説を作す)
諸善男子(諸の善男子) 如来所演経典(如来の演ぶる所の経典は) 皆為度脱衆生(皆衆生を度脱せんが為なり) 或説己身(或は己身を説き) 或説他身(或は他身を説き) 或示己身(或るは己身を示し) 或示他身(或るは他身を示し) 或示己事(或るは己事を示し) 或示他事(或るは他事を示す) 諸所言説(諸の言説する所は) 皆実不虚(皆実にして虚しからず)

所以者何(所以は何ん) 如来(如来は) 如実知見(如実に) 三界之相(三界の相を知見す)
無有生死(生死の) 若退若出(若しは退、若しは出有ること無く) 亦無在世(亦在世) 及滅度者(及び滅度の者無し) 非実非虚(実に非ず、虚に非ず) 非如非異(如に非ず、異に非ず) 不如三界見於三界(三界の三界を見るが如くならず) 如斯之事(斯の如きの事) 如来明見(如来明かに見て) 無有錯謬(錯謬(しゃくみょう)有ること無し)
以諸衆生(諸の衆生) 有種種性(種種の性) 種種欲種(種種の欲) 種行種種(種種の行、種種の) 憶想分別故(憶想分別有るを以っての故に、) 欲令生諸善根(諸の善根を生ぜしめんと欲して) 以若干因縁譬喩言辭種種説法(若干の因縁、譬喩、言辞を以って、種種に法を説く) 所作仏事未曾暫廢(所作の仏事未だ曾て暫くも廃せず) 如是我成仏已来甚大久遠(是の如く、我成仏してより已来、甚だ大いに久遠なり)
寿命無量阿僧祇劫(寿命無量阿僧祇劫なり) 常住不滅(常住にして滅せず) 諸善男子(諸の善男子) 我本行菩薩道所成寿命(我れ本、菩薩の道を行じて成ぜし所の寿命) 今猶未尽復倍上数(今猶未だ尽きず、復上の数に倍せり)
然今非実滅度(然るに今、実の滅度に非ざれども) 而便唱言当取滅度(而も便ち、唱えて当に滅度を取るべしと言う)
如来以是方便教化衆生(如来、是の方便を以って、衆生を教化す) 所以者何(所以は何ん)
若仏久住於世(若し仏、久しく世に住せば) 薄徳之人(薄徳の人は) 不種善根(善根を種えず) 貧窮下賎(貧窮下賎(びんぐげせん)にして) 貪著五欲(五欲に貪著し) 入於憶想妄見網中(憶想妄見の網の中に入りなん)
若見如来常在不滅(若し如来、常に在って滅せずと見ば) 便起憍恣而懐厭怠(便ち憍恣(きょうし)を起して厭怠(えんだい)を懐き) 不能生難遭之想恭敬之心(難遭(なんぞう)の想、恭敬(くぎょう)の心を生ずること能わじ)
是故如来以方便説(是の故に如来、方便を以って説く) 比丘当知(比丘当に知るべし) 諸仏出世難可値遇(諸仏の出世には、値遇すべきこと難し)
所以者何(所以は何ん) 諸薄徳人(諸の薄徳の人は) 過無量百千万億劫(無量百千万億劫を過ぎて) 或有見仏或不見者(或は仏を見る有り、或は見ざる者あり)
以此事故我作是言(此の事を以っての故に、我是の言を作す) 諸比丘(諸の比丘) 如来難可得見(如来は見ること得べきこと難しと) 斯衆生等聞如是語(斯の衆生等、是の如き語を聞いては) 必当生於難遭之想(必ず当に難遭の想を生じ) 心懐恋慕渇仰於仏(心に恋慕を懐き、仏を渇仰して) 便種善根(便ち善根を種ゆべし)
是故如来(是の故に如来) 雖不実滅而言滅度(実に滅せずと雖も、而も滅度すと言う)

又善男子(又善男子) 諸仏如来法皆如是(諸仏如来は、法皆是の如し) 為度衆生皆実不虚(衆生を度せんが為なれば、皆実にして、虚しからず)
譬如良医智慧聰達(譬えば、良医の智慧聡達にして) 明練方薬善治衆病(明かに方薬に練し、善く衆病を治す)
其人多諸子息(其の人、諸の子息多し) 若十二十乃至百数(若しは十、二十、乃至百数なり) 以有事縁遠至余国(事の縁有るを以って、遠く余国に至りぬ) 諸子於後飮他毒薬(諸子後に他の毒薬を飲む) 薬発悶亂宛轉于地(薬発し、悶乱して地に宛転(えんでん)す)
是時其父還来歸家(是の時に其の父、還り来って家に帰りぬ) 諸子飮毒(諸の子、毒を飲んで) 或失本心或不失者(或は本心を失える、或は失わざる者あり) 遥見其父皆大歓喜(遙かに其の父を見て、皆大いに歓喜し) 拜跪問訊(拝跪(はいき)して間訊すらく) 善安穏歸(善く安穏に帰りたまえり) 我等愚癡誤服毒薬(我等愚癡にして、誤って毒薬を服せり) 願見救療更賜寿命(願わくは救療せられて、更に寿命を賜えと)
父見子等苦悩如是(父、子等の苦悩すること是の如くなるを見て) 依諸経方(諸の経方に依って) 求好薬草(好き薬草の) 色香美味・皆悉具足(色香美味(しきこう・みみ)皆悉く具足せるを求めて) 擣簁 和合(擣簁和合して) 與子令服(子に与えて服せしむ) 而作是言(而して是の言を作さく) 此大良薬(此の大良薬は) 色香美味皆悉具足(色香美味、皆悉く具足せり)
汝等可服(汝等服すべし) 速除苦悩無復衆患(速かに苦悩を除いて、復衆の患無けんと) 其諸子中不失心擣簁和合者(其の諸の子の中に、心を失わざる者は) 見此良薬色香倶好(此の良薬の色香、倶に好きを見て) 即便服之病尽除愈(即便ち之を服するに、病尽く除こり癒えぬ)
余失心者(余の心を失える者は) 見其父来(其の父の来れるを見て) 雖亦歓喜問訊求索治病(亦歓喜し、問訊して病を治せんことを求索むと雖も) 然與其薬而不肯服(然も其の薬を与うるに、而も肯て服せず)
所以者何(所以は何ん) 毒気深入失本心故(毒気深く入って、本心を失えるが故に) 於此好色香薬而謂不美(此の好き色香ある薬に於いて、美からずと謂えり)
父作是念(父是の念を作さく) 此子可愍(此の子愍むべし) 為毒所中心皆顛倒(毒に中られて心皆顚倒せり) 雖見我喜求索救療(我を見て喜んで救療を求索(もと)むと雖も) 如是好薬而不肯服(是の如き好き薬を、而も肯えて服せず) 我今当設方便令服此薬(我今当に方便を設けて、此の薬を服せしむべし) 即作是言(即ち是の言を作さく) 汝等当知(汝等当に知るべし)
我今衰老死時已至(我今衰老して、死の時已に至りぬ) 是好良薬今留在此(是の好き良薬を、今留めて此に在く) 汝可取服勿憂不差(汝取って服すべし、差えじと憂うること勿れと) 作是教已復至他国(是の教を作し已って、復他国に至り) 遣使還告(使を遣して還って告ぐ) 汝父已死(汝が父已に死しぬと)
是時諸子聞父背喪(是の時に諸の子、父背喪せりと聞いて) 心大憂悩而作是念(心大いに憂悩して是の念を作さく) 若父在者(若し父在しなば) 慈愍我等能見救護(我等を慈愍(じみん)して、能く救護せられまし)

今者捨我遠喪他国(今者(いま)、我を捨てて遠く他国に喪したまいぬ) 自惟孤露無復恃怙(自ら惟るに孤露にして復恃怙(また・じこ)無し) 常懐悲感心遂醒悟(常に悲感を懐いて、心遂に醒悟(しょうご)しぬ) 乃知此薬色味香美(乃ち此の薬の色香味美なるを知って) 即取服之毒病皆愈(即ち取って之を服するに、毒の病皆愈ゆ) 其父聞子悉已得差(其の父、子悉く已に差(い)ゆることを得つと聞いて) 尋便来歸咸使見之(尋いで便ち来り帰って、咸(ことごと)く之に見(まみ)えしめんが如し)
諸善男子(諸の善男子) 於意云何(意に於いて如何) 頗有人能説此良医虚妄罪不(頗(も)し人の、能く此の良医の虚妄の罪を説く有らんや不や)
不也世尊(不なり、世尊) 仏言(仏の言わく) 我亦如是(我も亦是の如し) 成仏已来(成仏してより已来(このかた)) 無量無辺百千万億那由他阿僧祇劫(無量無辺百千万億那由佗阿僧祇劫なり) 為衆生故(衆生の為の故に) 以方便力言当滅度(方便力を以って当に滅度すべしと言う)
亦無有能如法説我虚妄過者(亦能く法の如く、我が虚妄(こもう)の過(とが)を説く者有ること無けん) 爾時世尊欲重宣此義(爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して) 而説偈言(偈(げ)を説いて言わく)

自我得仏来(我仏を得てより来(このかた)) 所経諸劫数(経たる所の諸の劫数) 無量百千万(無量百千万) 億載阿僧祇(億載阿僧祇なり) 常説法教化(常に法を説いて) 無数億衆生(無数億の衆生を教化して) 令入於仏道(仏道に入らしむ) 爾来無量劫(爾しより来無量劫なり) 為度衆生故(衆生を度せんが為の故に) 方便現涅槃(方便して涅槃(ねはん)を現ず) 而実不滅度(而も実には滅度せず) 常住此説法(常に此に住して法を説く) 我常住於此(我常に此に住すれども) 以諸神通力(諸の神通力を以って) 令顛倒衆生(顚倒(てんどう)の衆生をして) 雖近而不見(近しと雖も而も見えざらしむ) 衆見我滅度(衆我が滅度を見て) 広供養舍利(広く舎利を供養し) 咸皆懐恋慕(咸く皆恋慕を懐いて) 而生渇仰心(渇仰の心を生ず) 衆生既信伏(衆生既に信伏し) 質直 意柔軟 (質直にして意柔輭に) 一心欲見仏(一心に仏を見たてまつらんと欲して) 不自惜身命(自ら身命を惜しまず) 時我及衆僧(時に我及び衆僧) 倶出 霊鷲山 (倶に霊鷲山に出ず) 我時語衆生(我時に衆生に語る) 常在此不滅(常に此に在って滅せず) 以方便力故(方便力を以っての故に) 現有滅不滅(滅不滅有りと現ず) 余国有衆生(余国の衆生の) 恭敬 信楽(恭敬し信楽する者有らば) 我復於彼中(我復彼の中に於いて) 為説無上法(為に無上の法を説く) 汝等不聞此(汝等此れを聞かずして) 但謂我滅度(但我滅度すと謂(おも)えり) 我見諸衆生(我諸の衆生を見るに) 没在於苦海(苦海に没在せり) 故不為現身(故に為に身を現ぜずして) 令其生渇仰(其れをして渇仰を生ぜしむ) 因其心恋慕(其の心の恋慕するに因って) 乃出為説法(乃ち出でて為に法を説く) 神通力如是(神通力是の如し) 於阿僧祇劫(阿僧祇劫に於いて) 常在霊鷲山(常に霊鷲山) 及余諸住処(及び余の諸の住処に在り) 衆生見劫尽(衆生劫尽きて) 大火所焼時(大火に焼かるると見る時も) 我此土安穏(我が此の土は安穏にして) 天人常充満(天人常に充満せり) 園林諸堂閣(園林諸の堂閣) 種種宝荘厳(種種の宝をもって荘厳し) 宝樹多華菓(宝樹華果多くして) 衆生所遊楽(衆生の遊楽する所なり) 諸天撃天鼓(諸天天鼓を撃って) 常作衆伎楽(常に衆の伎楽を作し) 曼陀羅花 (曼陀羅華を雨らして) 散仏及大衆(仏及大衆に散ず) 我浄土不毀(我が浄土は毀(やぶ)れざるに) 而衆見焼尽(而も衆は焼け尽きて) 憂怖諸苦悩(憂怖(うふ)諸の苦悩) 如是悉充満(是の如き悉く充満せりと見る) 是諸罪衆生(是の諸の罪の衆生は) 以悪業因縁(悪業の因縁を以って) 過阿僧祇劫(阿僧祇劫を過ぐれども) 不聞三宝名(三宝の名を聞かず) 諸有修功徳(諸の有(あら)ゆる功徳を修し) 柔和質直(柔和質直なる者は) 則皆見我身(則ち皆我が身) 在此而説法(此に在って法を説くと見る) 或時為此衆(或時は此の衆の為に) 説仏寿無量(仏寿無量なりと説く) 久乃見仏者(久しくあって乃(いま)し仏を見奉る者は) 為説仏難値(為に仏には値い難しと説く) 我智力如是(我が智力是の如し) 慧光照無量(慧光照らすこと無量にして) 寿命無数劫(寿命無数劫なり) 久修業所得(久しく業を修して得る所なり) 汝等有智者(汝等智有らん者) 勿於此生疑(此に於いて疑を生ずること勿れ) 当断令永尽(当に断じて永く尽きしむべし)

仏語実不虚(仏語は実にして虚しからず) 如医善方便(医の善き方便をもって) 為治狂子故(狂子(おうし)を治せんが為の故に) 実在而言死(実には在れども而も死すと言うに) 無能説虚妄(能く虚妄を説くもの無きが如く) 我亦為世父(我も亦為れ世の父) 救諸苦患者(諸の苦患を救う者なり) 為凡夫顛倒(凡夫の顚倒するを為って) 実在而言滅(実には在れども而も滅すと言う) 以常見我故(常に我を見るを以っての故に) 而生憍恣心(而も憍恣(きょうし)の心を生じ) 放逸著五欲(放逸にして五欲に著し) 墮於悪道中(悪道の中に堕ちなん) 我常知衆生(我常に衆生の) 行道不行道(道を行じ道を行ぜざるを知って) 随応所可度(応に度すべき所に随って) 為説種種法(為に種種の法を説く) 毎自作是念(毎(つね)に自ら是の念を作さく) 以何令衆生(何を以ってか衆生をして) 得入無上道(無上道に入り) 速成就仏身(速かに仏身を成就することを得せしめんと)


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