徒然草

(0) (10) (20) (30) (40) (50) (60) (70) (80) (90) (100) (110) (120) (130) (140) (150) (160) (161) (162) (163) (164) (165) (166) (167) (168) (169) (170) (171) (172) (173) (174) (175) (176) (177) (178) (179) (180) (181) (182) (183) (184) (185) (186) (187) (188) (189) (190) (200) (210) (220) (230) (240) (241) (242) (243)

徒然草第百七十八段

或所の侍(さぶらい)ども(ある所の侍たちが)

内侍所(ないしどころ)の(宮中の内侍所の)

御神楽(みかぐら)を見て(御神楽を見て)

人に語るとて(人に語るのに)

「宝剣をば(「宝剣(草薙の剣)を) その人ぞ持ち給ひつる」などいふを聞きて(あの人がお持ちだったぞ」など言うのを聞いて)

内なる女房の中(なか)に(御簾の内の女房の中の一人が)

「別殿(べちでん)の行幸(ぎょうごう)には(「別殿へ行幸なさる時は)

昼御座(ひのござ)の御剣(ぎょけん) にて(（宝剣ではなく）昼御座(ひのござ)の御剣を) こそあれ」と(お持たせになりますものを」と)

しのびやかに言ひたりし(ひそかに言っていたのは) 心にくかりき(奥ゆかしかった)

その人(その人は) 古き典侍(ないしのすけ)なりけるとかや。(古参の典侍(ないしのすけ)であったとかいうことだ)