徒然草

(0) (10) (20) (30) (40) (50) (60) (70) (80) (81) (82) (83) (84) (85) (86) (87) (88) (89) (90) (91) (92) (93) (94) (95) (96) (97) (98) (99) (100) (101) (102) (103) (104) (105) (106) (107) (108) (109) (110) (120) (130) (140) (150) (160) (170) (180) (190) (200) (210) (220) (230) (231) (232) (233) (234) (235) (236) (237) (238) (239) (240) (241) (242) (243)

徒然草第九十段

大納言法印の召し使ひし乙鶴丸(大納言法印が召し使っていた乙鶴丸が)

やすら殿といふ者を知りて(やすら殿という者とねんごろになって) 常にゆき通ひしに(常に行き通っていた所)

ある時出(い)でて歸り來たるを(ある時乙鶴丸が外出して帰ってきたのを) 法印(法印が)

「いづくへ行きつるぞ」と問ひしかば(「どこへ行ってきたのだ」と質問すると)

「やすら殿の許(がり)罷(まか)りて候」と言ふ(「やすら殿の所へ行って参りました」と言う)

「そのやすら殿は(「そのやすら殿は)

男(おのこ)か法師か」とまた問はれて(俗人か法師か」とまた質問されて)

袖かき合せて(袖をすり合わせて)

「いかゞ候ふらん(「どうでしょうか)

頭をば見候はず」と答へ申しき(頭を見ませんでした」とお答えした)

などか(どうして) 頭ばかりの見えざりけん。(頭だけ見えなかったのだろう)