徒然草

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徒然草第百十六段

寺院の号(寺院の名をはじめとして) さらぬ万の物にも(その他あらゆる物にも)

名を付くる事(名を付ける事において) 昔の人は少しも求めず(昔の人は少しも趣向をこらさず)

ただありのままに(ただありのままに) やすく付けけるなり(わかりやすく付けたのである)

この比（ごろ）は深く案じ(この頃は深く考え) 才覚をあらはさんと(知性をみせびらかそうと) したるやうに聞ゆる(しているように思われる)

いとむつかし (たいそうわずらわしいものだ)

人の名も(人の名も) 目なれぬ文字を付かんとする(見慣れない文字を付けようとする) 益なき事なり(無益なことだ)

何事もめづらしき事をもとめ(何事も珍しい事を求め) 異説を好むは(奇抜な説を好むのは)

浅才の人の(教養の無い人が) 必ずある事なりとぞ。(必ずやる事であるという)