徒然草

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徒然草第八段

世の人の心を惑はすこと(世の人の心を迷わすことでは) 色欲には如かず(色欲に及ぶものはない)

人の心は愚かなるものかな。(人の心は愚かなものです)

匂ひなどは假のものなるに(匂いなどは仮のものなのに)

しばらく(しばらく) 衣裳に(衣装に) 薫物(たきもの)すと(香を焚き込んでいたと) 知りながら(知りながら)

えならぬ匂ひには(なんともいえない匂いには) 必ず心ときめきするものなり(必ず心がときめいてしまうものだ)

久米の仙人の(九米の仙人が) 物洗ふ女の脛(はぎ)の白きを見て(洗濯物をする女のスネの白いのを見て)

通を失ひけんは(神通力を失ってしまったのは)

まことに手足・膚(はだえ)などのきよらに(手足や肌が清らかに)

肥え膏(あぶら)づきたらんは(肥えてツヤがあるというのは)

外の色ならねば(人間本来のものなので) さもあらんかし。(たしかにそういうこともあるだろう)