徒然草

(0) (10) (20) (30) (40) (50) (60) (70) (71) (72) (73) (74) (75) (76) (77) (78) (79) (80) (81) (82) (83) (84) (85) (86) (87) (88) (89) (90) (91) (92) (93) (94) (95) (96) (97) (98) (99) (100) (110) (120) (130) (140) (150) (160) (170) (180) (190) (200) (210) (220) (230) (231) (232) (233) (234) (235) (236) (237) (238) (239) (240) (241) (242) (243)

徒然草第八十四段

法顯（ほふげん）三藏の(法顕三蔵が) 天竺に渡りて(天竺に渡って)

故郷の扇を見ては悲しび(故郷の扇を見ては悲しみ) 病に臥しては(病に臥しては)

漢の食を(中国の食事を) 願ひ給ひける事を聞きて(食べたいと願いなさった事を聞いて)

「さばかりの人の(「あれほどの人が) 無下にこそ(ひどく) 心弱き氣色を(心弱い様子を)

人の國にて見え給ひけれ」と人の言ひしに(外国でお見せになったことだなあ」と言った所)

弘融僧都(弘融僧都が) 「優に情ありける三藏かな」といひたりしこそ(「優しく情け深い三蔵だなあ」と言ったのは実に)

法師の樣（よう）にもあらず(法師のようにでもなく) 心にくく覺えしか。(奥ゆかしく思われたことよ)